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186. 気候危機におけるマルチスケール・異分野・多国間アプローチの必要性

 

生態学は長らく自然界への人間のインパクトを研究対象にしてきましたが、現在進行中の気候危機は微生物から動物相にわたる生物に影響を及ぼしています。この緊急事態を受け、Nature Climate Change誌2020年11月号の社説は、マルチスケール・異分野・多国間アプローチの必要性を訴えました。

従来生態学は特定地域の変化を研究対象としてきましたが、細胞内部からグローバルにかけて全ての生物学的スケールにおける気候変動の影響を分析しようとする動きが高まっています。地球規模の変化に対し、あるグループ・種・エコシステム全体の感受性を定義する上で、種間・種内遺伝的多様性が重要な役割を果たすことが次第に明らかになっています。さらに、自然のまま、あるいは誘引された遺伝的多様性が気候変動への強靭性強化に重要な役割を果たすというエビデンスが蓄積されています。こうした研究は、遺伝的多様性が個人レベルを超えたインパクトを持つこと、また分子生物学を気候変動生態学分野に取り入れることの重要さを示しています。

生態学的スケールの一方で、リモート・センシング技術の発展により、グローバル・スケールの研究が増加しています。それでもグローバルなデータは現場の研究によって補完されるべきですが、こうした研究は極めて地理的なバイアスがあり、最大の気候リスクに直面する地域ほど不足しています。

国際農研は、地球規模課題に取り組みながら、最新ツールを利用した育種栽培技術開発を行いつつ、開発途上国の現場に沿った気候変動などの問題解決のための農業技術開発を行っています。

 

参考文献

Climate connections. Nat. Clim. Chang. 10, 973 (2020).  https://doi.org/10.1038/s41558-020-00947-x 

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)