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1173. ワンヘルス・アプローチにおける生態学の重要性

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1173. ワンヘルス・アプローチにおけるエコロジーの重要性

 

COVID-19パンデミックから、5年が経とうとしています。COVID-19は人獣共通感染症の一つですが、人獣共通感染症の発現は、農業集約化や人間の居住、森林などの生態系への侵入など、環境変化や生態系の攪乱と密接に関わっています。

昨年末、PNAS誌に発表された論説は、生物多様性喪失・極端な気候・生息地の分断・新興感染症の発現の関係を踏まえ、ワンヘルス・アプローチにおける生態学の視点の重要性を強調しました。

温暖化が加速した過去40-50年間に、植物や動物の多様性は大幅に減少した一方 (50〜68%)、人獣共通感染症は1940年の追跡以来増加し、219か国で4,400万人以上の症例が発生しています。しかし、研究においては、動物や病原体そのものの分析に焦点が置かれる一方、それらに影響を与える生態学はあまり重視されてきませんでした。複雑で絡み合った問題に対処するには、生態学的な専門知識を生かさなければなりません。

こうした課題に応える上で効果的な学際的アプローチが「ワンヘルスOne Health」です。2000年代初頭から半ばにかけて登場したワンヘルスは、人・動物・環境に対する最適な健康を達成するために、異分野間の統合的なアプローチとして定義されています。

それでも現在、ワンヘルスにおいて、医学的なアプローチが支配的です。インフラの破壊(建物の倒壊)から、コミュニティ全体を壊滅させる山火事、異常気象まで、伝統医学の範疇外にある深刻な問題が地球規模で大災害を引き起こしていますが、こうした問題も明らかに動物-人間-環境の領域内にあります。論説は、動物・人間・生態学の分野間の文化の違いを超え、グローバルな監視とデータベースシステムを確立し、より優れた予測モデルを開発する必要を訴えました。

 

(参考文献)
“One Health” needs ecology John L. Gittleman  December 6, 2024 PNAS. 121 (50) e2413367121
https://doi.org/10.1073/pnas.2413367121

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

 

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