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211. プラネタリー・ヘルス外交の必要性

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2021年1月元日、The Lancet Planetary Health誌にて、「プラネタリー・ヘルス外交:アクションの要請」論考が発表されました。以下、内容を紹介します。


コロナ禍が世界中を席巻し、パンデミックが収束する見込みはまだ見えておりませんが、今こそ世界のリーダーは、人類・地球双方に利益をもたらす脱炭素経済の構築に向け、危機を機会に転換する包括的なアプローチの採択が求められています。


パンデミックは世界がいかに密接に繋がっており、課題解決のための協調行動が不可欠であるかを我々に知らしめました。にも関わらず、現在、歴史的に見ても多国間主義は最低の水準にあり、課題満載にもかかわらず解決策に乏しいという手詰まり状態にあります。国際機関は国家の思惑に振り回され、ワクチンを巡る攻防も含め、地政学的なパワー抗争により低・中所得の脆弱な社会層の健康が犠牲になっています。


今こそ、プラネタリー・ヘルス外交を実行する最高のタイミングといえます。プラネタリー・ヘルスの視点を取り入れることで、これまでバラバラに対処されてきた(気候変動・環境問題・食料栄養安全保障・公衆衛生など)地球規模課題の根深い問題への対応が可能です。従来の縦割りとは異なる、真に包括的なアプローチに基づき、経済至上主義を超えたモニタリング指標の策定、プラネタリー・ヘルスを考慮した安全保障の理解、そしてルールに基づく国際秩序維持のための国際機関改革などを実施していかなければなりません。


これまでプラネタリー・ヘルス・コミュニティにおいて、国際関係論の専門家は十分に存在感を発揮してきたとは言えませんでした。パンデミックからの復興において、持続可能な開発目標SDGs達成にあたり、プラネタリー・ヘルス戦略の成功は、グローバル・パワーの展開への配慮にかかっています。プラネタリー・ヘルスの知識を効果的に実行に移す過程で、政治経済学者、弁護士、外交専門家、外交官、公務員といった専門家の参加が必須となります。


国際農研は、国際農林水産業研究分野において、日本を代表して国際会議やプラットフォームに参加しています。その一環として、国際農研理事長が、G20首席農業研究者会議(G20MACS)に政府代表団団長として参加、また、FAO事務局長顧問団メンバーを務めるなど、世界トップクラスの農業研究者らとともに、世界の食料の安定供給に係る農業研究の優先事項を協議し、各国等の連携強化について情報交換を行っています。

 

参考文献
Nicole de Paula, Planetary health diplomacy: a call to action, The Lancet Planetary Health, Volume 5, Issue 1, 2021, Pages e8-e9, https://www.thelancet.com/journals/lanplh/article/PIIS2542-5196(20)3030… 

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)
 

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