大果で食味良好な半わい性のパパイヤ新品種「石垣ワンダラス」
パパイヤの新品種「石垣ワンダラス」は、「ワンダーブライト」の自然交雑実生から選抜した両性系統である。半わい性の生育特性を持ち、大果で糖度が高く食味がよい。
背景・ねらい
パパイヤは、世界の熱帯・亜熱帯地域で広く生産されている。生食用パパイヤは、「サンライズ」が世界市場および国内市場で高い評価を受けている。しかし「サンライズ」は、樹高が高くなり、台風の常襲地域では安定した生産が困難である。そこで、わい性で「サンライズ」と同等かそれ以上の果実品質特性を持つ、パパイヤの新品種育成を図る。
成果の内容・特徴
- 1997年に「ワンダーブライト」の自然交雑種子を播種し、2000年にわい性程度と果実品質で一次選抜した。2001年から品種登録に向け、80リットル鉢(赤黄色土:サンゴダスト:堆肥=5:2:2)に定植し、無加温のビニールハウス内で養液土耕栽培を行い、特性調査を開始した。2008年に栽培特性、果実品質とも優れているとの結論を得、2009年3月に品種登録を申請した。
- 果形は、楕円に近い倒卵形で、平均1796 gと大果である。果皮は鮮橙色、果肉は橙赤色である。果肉が厚く、果実に稜線が認められないため剥皮しやすく、調理性が高い(表1、図1)。
- 糖度は平均13.9%と「ワンダーフレア」より高く「サンライズ」や「石垣珊瑚」と同程度である。強い芳香があり、食味良好である(表1)。
- 樹勢は中庸で、樹姿は直立性の両性系統である。節間長は平均24mmと「サンライズ」に比べて短く、わい性品種である「石垣珊瑚」や「ワンダーフレア」に比べると長く、半わい性を示し、着花開始節は平均21節である(表1、図2)。
成果の活用面・留意点
- 果実の肥大は、無加温ビニールハウス栽培では季節に強く影響を受け、着果量によっても異なる。
- 高温期・低温期には花粉稔性の低下による不受精のため、落花・落果が起こりやすく、結実性を高めるためには雄性株の花粉を用いた人工授粉を行う必要がある。
- 接ぎ木および挿し木繁殖が困難であり、また、ウイルス被害の回避のため、ウイルス無毒株の組織培養による増殖が好ましい。
具体的データ
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表1 「石垣ワンダラス」の樹体および果実特性(2001~2005年)
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A:側面、B:果梗部、C:果頂部、D:縦断面、E:横断面 -
- Affiliation
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国際農研 熱帯・島嶼研究拠点
- 分類
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技術A
- 予算区分
- 交付金[パパイヤ品質] 交付金[熱帯果樹低樹高]
- 研究課題
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パパイヤ等熱帯果樹の高品質系統の評価と選抜、東南アジアにおける熱帯果樹(ドリアン・マンゴスチン等)の低樹高整枝栽培技術と周年生産技術の確立
- 研究期間
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2008年度(1997~2005年度、2006~2010年度)
- 研究担当者
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深町 浩 ( 農研機構 果樹研究所 )
加藤 秀憲 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )
日高 哲志 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )
玉城 真男 ( 石垣島パパイヤ )
小川 一紀 ( 農研機構 果樹研究所 )
小森 貞男 ( 岩手大学 )
伏見 力 ( 熱帯・島嶼研究拠点 )
- ほか
- 発表論文等
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品種登録出願申請中(第23577号)
- 日本語PDF
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2009_seikajouhou_A4_ja_Part4.pdf334.49 KB