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175. 食料輸入額と輸出収入に関する最近の動向

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2020年11月、国連食糧農業機関(FAO)は、「食料見通し― 世界食料市場報告  Food Outlook – Biannual Report on Global Food Markets」を公表しました。本報告書にて、2020年11月10日に開催されたJIRCAS創立50周年記念シンポジウムにおいて、コロナ禍のグローバルフードシステムへの影響について講演を行った、FAOのDr. Josef Schmidhuberによる論考「食料輸入費用と輸出収入に関する最近の動向:COVID-19チャレンジ」が発表されました。

COVID-19パンデミックは、食料を輸入に依存する国々の食料安全保障についての懸念をもたらしました。2020年6月までの入手可能なデータによれば、完全ではないものの、COVID-19ショックに対する世界食料市場の強靭性を示唆しています。2020年初頭に世界取引量が大きく縮小した商品は、飲料や水産物、そして畜産製品などの所得弾力性の高い(所得の1%変化に対して需要が1%以上の変化を伴う、ここでは所得の落ち込みに対しそれ以上の需要縮小が起きる)商品でした。これら商品は国内産の産品との代替が行われたと想定されます。同時にCOVID-19は、疑いの余地なく、世界市場に統合された国々の経済(GDPs)に負の影響をもたらしています。2020年こでまでのところ、高価格食料品の国際価格は下落傾向にありますが、低所得者はこれら商品を購買する余裕がなくなっていると考えられます。穀類・油糧種子・植物油・砂糖・果物や野菜などの作物には農業適地があるため、輸入代替の可能性は少なくとも短期的には限られています。同時に、これら産品のほとんど(果物と野菜を除き)が、大量船積み輸送で取引され、高度に資本集約的で輸送ロジスチックもほぼ人の手を介さずに自動化されています。このため2020年の世界的な食料輸入額は2019年水準とほぼ同じか、若干超えるレベルに落ち着くと予測されています。

より詳しくは、リンクからご覧ください。

参考文献

Josef Schmidhuber and Bing Qiao. (2020) Recent trends in food imports bills and export earnings: the COVID-19 challenge http://www.fao.org/3/cb1993en/cb1993en_special_feature.pdf

FAO. 2020. Food Outlook - Biannual Report on Global Food Markets – November 2020. Rome. http://www.fao.org/documents/card/en/c/cb1993en 

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

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