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738. 黒海地域からの食料・肥料輸出に関する国際協調のゆくえ

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738. 黒海地域からの食料・肥料輸出に関する国際協調のゆくえ

ロシアのウクライナ侵攻以来、食料輸出大国である両国からの食料・肥料輸出停滞を巡る不確実性が、今年上半期の食料価格高騰をもたらし、世界の食料安全保障に影響を及ぼしてきました。

国際食料政策研究所(IFPRI)の研究者がGlobal Food Security誌に発表した論文は、ロシア―ウクライナ戦争が世界および地域の食料安全保障にもたらした甚大な影響を分析、とりわけ黒海地域からの穀物の輸入依存度の高い中東・北アフリカ(NEMA)地域が貿易寸断ショックに脆弱であることを示しました。論文は、これらの国において、食料安全保障の危機は貧困層の多い農村に多く見られるものの、食料価格の高騰によって社会保障や食料補助金の支援のない都市住民へのインパクトも特に大きかったことを示唆しました。何よりも、戦争・地政学的紛争は、価格の変動を通じて食料安全保障をめぐる不確実性を増幅させることを表らかにしました。

昨年7月12日、ウクライナ産穀物の黒海経由輸出を保証する合意が国連とロシア、ウクライナ、トルコの4者間でなされました。本合意は11月に交渉の末、120日間延長されました。その期限3月18日が迫る中、ロシアは60日間の延長に応じると発表しており、国連・ウクライナ・トルコがロシアとの交渉を行っていることが伝えられています。

国連によると、輸出保証合意はウクライナの港から2400万トンの穀物輸出や肥料輸出を可能にしてきたとされ、その55%は途上国向けであり、食料安全保障の危機緩和に貢献しました。

世界および日本の食料安全保障のためにも、紛争の回避、国際協調の道筋をたてることが必要です。そのためには、国際的に取引される食料の国際需給動向についての情報収集が極めて重要になります。
 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

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