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662. 黒海合意延長とFAO食料見通し

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662. 黒海合意延長と食料見通し

ロシアのウクライナ侵攻以来、食料輸出大国である両国からの食料・肥料輸出停滞を巡る不確実性が、今年上半期の食料価格高騰をもたらし、世界の食料安全保障に影響を及ぼしてきました。

ウクライナ産穀物を黒海経由で輸出することを保証する国連とロシア、ウクライナ、トルコの4者合意により、合意が結ばれた7月12日以降、111万トンの食料輸送が行われてきました。本合意は11月19日に期限切れを控えていましたが、120日間延長されることが、11月17日、国連により発表されました。ウクライナによる攻撃を理由に合意離脱の可能性をちらつかせていたロシアの動向が注目されていましたが、当面、世界的な食料価格の高騰は回避されるとの見込みです。

食料・肥料・エネルギー価格の動向は、食料システムを経由して、世界の食料安全保障を大きく左右します。

11月11日に公表された国連食糧農業機関(FAO)による食料見通しは、2022年の世界食料輸入額が予想を上回る1.94兆ドルに上昇する見込み、と発表しました。

世界食料価格の高騰と米ドルに対する通貨価値の下落によって今後の上昇率は減速するとみられるものの、新たな予測値は過去最高で2021年の記録から10%上回っており、輸入国の購買力に負荷を与えています。輸入額増の殆どは高所得国によるもので、世界価格上昇に加え輸入量も上昇する見込みです。経済的に脆弱な諸国は、高価格のあおりを一層受けています。低所得国の輸入総額はほぼ変わらないものの、輸入量は10%縮小するとみられており、こうした国々が輸入アクセスの制約に直面する可能性は食料安全保障の点から懸念をもたらしています。

例えば、サブサハラアフリカは、輸入に48憶ドル追加で支払うことが予測されているのに対し、食料輸入は量ベースで7億ドル相当の減少が見込まれています。同様に、低所得国の食料輸入額が変わらないのに、量ベースで10%縮小することが予測されています。こうした状況は、食料安全保障にとって危機的な状況であると言わざるをえません。

食料見通し報告書は、高所得国があらゆる食料品の輸入を続ける一方、途上国は主食品に限定されることを指摘しています。

報告書はまた、肥料を含む輸入農業資材についての世界的な支出についても評価を行っています。資材輸入額は、2022年、前年比で48%増、2020年からは112%増の4240憶ドルにのぼると見込まれています。肥料とエネルギーはとりわけ低所得国の農業資材の9割を占めます。これらの国々において、肥料の適用を削減することで農業生産性が下落し、国内食料生産の縮小が懸念されます。世界農業食料安全保障に関する逆風は、2023年にも続くと見込まれています。

 

(参考文献)
FAO. 2022. Food Outlook – Biannual Report on Global Food Markets. Food Outlook, November 2022. Rome. https://doi.org/10.4060/cc2864en

 

明日、11月22日(火)午後、JIRCAS国際シンポジウム2022「持続可能な食料システムにおける零細漁業と養殖業の役割」がハイブリッド開催されます。申込は締め切りましたが、後日、シンポジウムの様子を国際農研YouTubeサイトでオンライン配信する予定です。

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)