Pick Up

184. COVID-19ロックダウンにかかわらず大気中の二酸化炭素水準増加トレンドは継続

関連プログラム
情報収集分析

 

2020年11月23日、世界気象機関 (WMO)は、COVID-19パンデミックに伴う産業活動の停止や移動規制にもかかわらず、記録的な温室効果ガス排出傾向は続き、気温上昇、極端気象の頻発化、極地氷床の溶解、海洋面の上昇、海洋の酸性化をもたらしていると発表しました。

ロックダウンは二酸化炭素・メタン・一酸化窒素などの大気汚染物質・温室効果ガスの排出を一時的に減らしたものの、過去からの累積的排出を反映する大気中二酸化炭素濃度の変化は、カーボンサイクルの年間変動内に収まっています。

WMOによると、二酸化炭素濃度は2015年に400 ppm に達したのち、わずか4年後の2019年には年間世界平均で410 ppmに達しました。1990年来、長期的な影響を及ぼす温室効果ガスによる放射強制力は45%上昇しています。WMOは、このようなスピードでの変化は歴史上経験がなく、COVID-19ロックダウンは長期的なトレンドに殆ど影響を及ぼさないため、持続的に温出効果排出カーブを平坦化させることの緊急性を訴えました。COVID-19パンデミックは気候変動を解決しませんが、温室効果ガス排出ネットゼロ・カーボンニュートラルを目指し、より持続的で野心的な気候アクションに向けて、無駄にする時間は残されていないことを広く認識させる契機となりました。

温室効果ガス排出に関して、農業関連活動は約23%、流通やフードロスまで含めたフードシステム全体では3割を占めるとされています。農業関連では、土地利用変化に伴う森林破壊による二酸化炭素、畜産・水田による人為的なメタン排出、窒素肥料の非有効活用にともなう一酸化窒素排出が、主な排出源となっています。国際農研は、アジアにおける畜産・水田からのメタン排出抑制技術の開発を実施し、また、窒素肥料効率化に貢献しうる作物メカニズム解明にかかわる国際研究ネットワークを主導しています。

参考文献

WMO. Carbon dioxide levels continue at record levels, despite COVID-19 lockdown, November 23, 2020. https://public.wmo.int/en/media/press-release/carbon-dioxide-levels-con…

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

関連するページ