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181. 温室効果ガス排出量達成のためのマイルストーン

 

2015年パリ協定において、世界の国々は世界的な気温上昇を2℃以下、理想的には1. 5℃以下に抑制することで合意しました。この達成には、温室効果ガス排出量を2030年までに半減させ、2050年には純ゼロに削減させなければなりません。問題は、我々は2030年、2050年までに気候変動ターゲットを達成するための努力が順調に進んでいるかということです。

2020年11月、World Resources Institute (世界資源研究所)は、2030年から2050年までに達成すべき気候アクションのマイルストーンについてまとめた報告書を公表しました。報告書によると、分析対象とした21指標のうち、少ない例外を除き、世界が排出削減を達成するには進展が遅すぎ、幾つかの分野では逆方向に進んでいます。以下、森林セクターと農業セクターについての評価を見ていきます。

森林セクターに関しては、2030年までにとりわけ熱帯地域における森林破壊の減速と樹木再生率の上昇を5倍速で達成する必要があります。森林破壊は2001年から増加し、とりわけ原生林の減少は生物多様性・エコシステム機能・炭素隔離に大きな影響を及ぼします。国際的なコミットメントと、その実現化をサポートするためのファイナンス・インセンティブ・政策が必要となります。

農業分野については、森林保全をしつつ人口増に合わせた需要を満たすため、生産性向上と消費パターンのシフトが必要となります。本報告書で評価する全分野21指標のうち、これまでの趨勢から2030年ターゲットを達成しうるとされている2指標は農業分野のもので、収量向上と肉類消費です。ただしあくまで世界的な趨勢であって、国・地域レベルにおける達成度に大きな差があり、注意が必要です。例えば、サブサハラアフリカにおいては、人口増に対する食料需要を満たしながら森林・サバンナ破壊を伴う農地拡大を回避する上で、作物収量向上の進展は10倍以上加速される必要があります。同様に、肉類消費削減を公平面に配慮して達成するには、途上国における消費の緩やかな上昇を許容するために、欧米における消費を過去5年間の3倍以上のスピードで削減する必要があります。さらに、農業生産からの温室効果ガス排出は未だに増加傾向にあり、早急に削減していく必要があります。

国際農研は、開発途上国における持続的な収量増加技術や温室効果ガス排出削減技術の開発に取り組んでいます。

 

参考文献

Katie Lebling, et al. State of Climate Action: Assessing Progress toward 2030 and 2050 World Resources Institute and ClimateWorks Foundation https://www.wri.org/publication/state-climate-action-assessing-progress…; - November 2020

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)