2025年10月27日、国際農研(JIRCAS)は、東京都千代田区の一橋講堂において、JIRCAS国際シンポジウム2025「アジアモンスーン地域における農林水産業技術の実装加速化:生産力向上と持続可能な食料システム構築に向けた進展と展望」を開催しました。
2021年の国連食料システムサミット(UNFSS)以降、世界の食料システムは大きな転換期を迎えています。日本政府は「みどりの食料システム戦略」(2021年)、「日ASEANみどり協力プラン」(2023年)などを推進し、2025年には新たな国際イニシアティブ「MIDORI∞INFINITY(ミドリ・インフィニティ)」を発表しました。これらの方針を踏まえ、国際農研はアジアモンスーン地域における生産力の向上と持続性の両立を目指し、多国間協力を通じて技術の適用を加速化する「グリーンアジアプロジェクト」を推進しています。本シンポジウムは、その成果と教訓を広く共有し、今後の国際連携の方向性を展望することを目的として開催されました。
セッションIでは、Dr. Stefanos Fotiou(国連食料システム・コーディネーションハブ 事務局長)、Dr. Pham Quang Minh(ASEAN事務局 食料・農業・林業担当課長)、農林水産省の萩原英樹参事官による基調講演の後、舟木康郎グリーンアジアプロジェクトリーダー(PL)が登壇し、グローバル、日本、ASEANの連携の観点からプロジェクトの設立経緯と活動概要を紹介しました。
セッションIIでは、コーヒーブレークを兼ねたネットワーキングの時間に、技術カタログ掲載技術をテーマとしたポスター発表が行われました。国際農研をはじめ、農研機構、森林研究・整備機構 森林総合研究所、水産研究・教育機構、産業技術総合研究所、大学等の研究者が成果を紹介し、参加者との活発な意見交換が行われました。
セッションIIIでは、グリーンアジアプロジェクトの国際科学諮問委員会委員でもあるDr. Mohamad Zabawi bin Abdul Ghani(マレーシア農業研究開発研究所 所長)がビデオ出演で持続的技術開発を紹介したほか、Dr. Phisamai Srichayet(カセサート大学食品開発研究所 研究員(教授級))が食料加工分野におけるイノベーションの役割と食料システム変革への取り組みを紹介しました。
セッションIVでは、飯山みゆきプログラムディレクター(PD)を座長とし、Prof. Shenggen Fan(中国農業大学 教授)、Dr. Jacqueline Hughes(世界農業フォーラム 事務局長:オンライン)、Prof. Joachim von Braun(ボン大学 教授:オンライン)、 Dr. Jean Balié(FAO特別顧問:ビデオメッセージ)ら国際科学諮問委員の各氏に加え、基調講演者(Fotiou局長、Minh課長)、農林水産技術会議事務局の野澤聡 国際研究官、国際稲研究所(IRRI)の齋藤和樹 上級研究員、国際農研の林慶一 環境PDが参加し、ディスカッションが行われました。
パネル登壇者からは、グリーンアジアプロジェクトが日本で培われた持続的農業技術を体系化し、その中から応用段階にある技術を選定・実証するとともに、社会実装に必要な条件を広く発信してきた点が「食料システム変革を目指す画期的な取り組み」として高く評価されました。また、今後は技術の受益者(農家や地域など)のニーズや、制度的改革(政策・法制度面)の視点を取り入れ、国際機関や民間との連携を一層強化するための調整的な仕組みを導入することを提案されました。
シンポジウムの模様は、後日JIRCAS公式YouTubeチャンネル「JIRCAS channel」にてアーカイブ動画を公開予定です。
 
     
 
 
 
 
