JIRCAS国際シンポジウム2022「持続可能な食料システムにおける零細漁業と養殖業の役割」開催報告

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令和4年11月22日(火)、国際農研は、農林水産省、水産研究・教育機構の後援を受け、JIRCAS国際シンポジウム2022「持続可能な食料システムにおける零細漁業と養殖業の役割」をハイブリッド開催しました(開催場所:一橋大学一橋講堂)。

令和4年11月22日(火)、国際農研は、農林水産省、水産研究・教育機構の後援を受け、JIRCAS国際シンポジウム2022「持続可能な食料システムにおける零細漁業と養殖業の役割」をハイブリッド開催しました(開催場所:一橋大学一橋講堂)。

本イベントには、オンサイトで55名に参加していただいたほか、オンラインでは日本や東南アジアをはじめ、世界16カ国から198名の視聴者の方々にご聴講いただき、持続可能な食料システムにおける零細漁業と養殖業の役割に対する関心の高さが伺えました。
ご参加いただきました皆様、大変ありがとうございました。

 

プログラム

https://www.jircas.go.jp/ja/symposium/2022/e20221122_jircas をご覧ください。

当日お聞きになれなかった方のために、イベントの様子を、国際農研のYouTubeチャネルにて公表いたしました。是非ご覧ください(オリジナル言語のみで、日・英通訳はついておりません)。

Part1: https://youtu.be/wfs-l5xoIsQ

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Part2: https://youtu.be/rs_P-n-gQJc

Part3: https://youtu.be/zz9OdVf8xfE

Part4: https://youtu.be/wnAbjK4EKZw

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開催報告の概要

本シンポジウムは、2021年国連食料システムサミットと2022年零細漁業と養殖の国際年における議論を背景に、持続可能な食料システムにおける零細漁業と養殖業の役割の重要性と、持続性と生産性向上を両立する科学技術イノベーション実装の現状と課題について、共通認識を形成し、国際共同研究の方向性についての意見交換の機会を提供することを目的に開催されました。

冒頭、国際農研の小山 修 理事長が開会挨拶として、このシンポジウムが国内外の研究者や学術コミュニティが、レジリエントで効率的かつ持続可能な漁業・養殖業のための機会や課題について議論する場を提供することを目的とすることが述べられました。続いて神谷 崇 水産庁長官から、このシンポジウムでの活発な意見交換を通じて、持続可能な食料生産システムの重要性、持続性と生産性向上の両立についての理解が深まることを期待するという歓迎の挨拶が述べられました。

基調講演として、東京大学大学院農学生命科学研究科の八木 信行 教授から、持続可能な食料システムにおける漁業と養殖業の役割、2021年世界食糧賞を受賞されたワールドフィッシュ 栄養・公衆衛生担当グローバルリードのShakuntala Haraksingh Thilsted博士から、水産食料システムに対する全体論的かつ栄養学的に配慮したアプローチの開発に関する講演をしていただきました。

セッション1「持続可能な食料システムにおける水産養殖の課題」では、国際農研の中島 一雄 プログラムディレクターが座長を務め、国際農研 水産領域の宮田 勉 領域長、水産研究・教育機構 水産技術研究所生産技術部の崎山 一孝部長から、それぞれ東南アジアと日本における持続可能な食料システムの実現に向けた零細漁業と養殖業の課題について講演をしていただきました。次いでタスマニア大学海洋・南極研究所のJeffrey T. WRIGHT准教授から温室効果ガス排出削減と気候変動対策に向けた海藻の活用の可能性について講演をしていただきました。

セッション2「漁業・養殖業の持続可能性と生産性を高めるための研究と応用」では、金森 紀仁 プロジェクトリーダーが座長を務め、水産領域の圦本 達也 主任研究員、人間環境大学 環境科学部の森岡 伸介 教授、東南アジア漁業開発センター・養殖システム水圏生態科のJon P. ALTAMIRANO科長から、それぞれ二枚貝、小型在来魚種、ブラックタイガーを対象とした増殖・養殖技術等の開発・利用事例を紹介していただきました。地域コミュニティのエンパワーメントと環境の持続可能性に取り組むために研究が重要であること、同時に、地域の環境は千差万別であり、イノベーションも地域特有のニーズに合わせて行わなければならないことが確認されました。

パネルディスカッションでは、国際農研 水産領域のMarcy N. Wilderプロジェクトリーダーがモデレーターを務め、各パネリストに質問をしました。八木教授には、日本の事例の海外への応用についての質問がなされ、Thilsted博士には、より多くの女性や若者が水産食料システムに関連したキャリアや仕事の機会を得られるようにする方法について質問がなされて、コメントをいただきました。次いで、事前にいただいていた質問(漁獲漁業と養殖漁業の生産量のバランスは将来どのようになるのか、地球規模の温暖化による海水温の異常上昇が長く続くと今後、海の動植物への影響はどのようなものかなど)についての質疑応答がなされました。最後に会場からの質問(産地からアクセスが悪い内陸部での水産食品へのアクセスなど)についての質疑応答がなされました。

閉会挨拶では、国際農研の山本 由紀代 理事から、講演者、参加者へのお礼に加え、まとめとして次の点が述べられました。

  • 第一線の専門家の方々から、漁業や養殖業が抱える課題にどのように取り組むのがベストなのか、その経験を共有していただき、大きな収穫を得ることができた。
  • 単一の解決策は存在しないが、小規模漁業者が地域特有の状況で直面する技術的な課題に取り組むだけでなく、規制や制度などの社会経済的制約を克服するための支援分野を特定するためには、学際的なアプローチが鍵となる。
  • 漁業や養殖業におけるイノベーションを加速させるためには、地域社会、研究機関、民間セクター、政策立案者など、すべてのステークホルダーのローカルな活動だけでなく、コミットメントを可能にすることが必要である。

 

本シンポジウムにご参加いただいた皆様、会場やオンラインでご視聴いただいた皆様に感謝します。このシンポジウムが、食料・栄養安全保障と強靭かつ誰も取り残さない持続的な漁業・養殖業の発展を実現するための科学技術イノベーション振興に貢献することを願っています。国際農研は、引き続き、国内外パートナーと協力し、生態系アプローチによる熱帯域の持続的水産養殖技術開発及び普及に貢献していきます。

写真1. 記念写真

写真2. 小山理事長からの開会挨拶

写真3. 神谷水産庁長官からの歓迎挨拶

写真4. 東京大学の八木教授による基調講演

写真5. WorldFishのShakuntala Haraksingh Thilsted博士による基調講演

写真6. パネルディスカッションの様子

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