多栄養段階統合養殖(IMTA)における課題と将来展望に関するワークショップのプロシーディング

関連プログラム
食料
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熱帯水産養殖

国際農林水産業研究センター(国際農研)は、2011年から10年間、フィリピンの東南アジア漁業開発センター(SEAFDEC)と共同で、アジアモンスーン地域における水産物の持続的かつ公平な生産促進を目的とした多栄養段階統合養殖(IMTA)の研究プロジェクトを実施しました。この度、2019年8月に開催したワークショップのプロシーディングを出版しました。

水産養殖は、最も急速に成長している食料生産産業の一つです。現在、世界の養殖生産量の約50%は魚の養殖が占めています。しかし、養殖は増大する魚類生産の需要に対する解決策を提供する一方で、市販飼料の大量使用、魚類の排泄物、飼料投入時の残滓、その他の廃棄物に関連した水質汚染が環境問題の主要な原因となっています。そのため、今後はより環境負荷の少ない持続可能な養殖方法を適用していく必要があります。

多栄養段階統合養殖(IMTA)は、食物連鎖の異なる栄養レベルの生物を組み合わせることで、魚の餌や養殖から排出される栄養分を有効に活用し、バランスのとれたシステムを構築する養殖技術です。さらに、環境浄化、経済安定性、社会受容性を促進し、持続可能な養殖業の発展を目指すものです。

2011年、国際農林水産業研究センター(国際農研)は、フィリピンの東南アジア漁業開発センター(SEAFDEC)と共同で、アジアモンスーン地域における水産物の持続的かつ公平な生産促進を目的としたIMTA研究プロジェクトを開始しました。第1期は「生活向上のための総合的多栄養養殖技術の開発」として5年間実施されました。このプロジェクトはさらに5年間更新され、第2フェーズ「複数生物の組み合わせによる持続的・効率的な水産養殖技術の実証・検証」に移行しました。2019年8月には「JIRCAS-SEAFDEC Joint Workshop on IMTA Research - Understanding Current Challenges and Future Prospects」を開催し、プロジェクトの第1期と第2期の成果をレビューするとともに、新たな養殖システムとしてのIMTAの適用性を評価し、今後の研究計画や進め方について議論しました。

このプロシーディングは、国際農研とSEAFDECの研究者とその協力者が行ったIMTA研究の10年間の成果をまとめたもので、対象種の生態的特性、環境負荷の評価、社会経済分析などのテーマを扱っています。これまでの研究成果が、研究者、漁業管理者、養殖場経営者、小規模農家にとって参考となる情報を提供し、IMTAの普及と実用化につながる関心を喚起することを期待しています。また、環境保全の重要性が高まる中、環境との調和に根ざしたIMTAの開発が、熱帯沿岸域における持続可能で公平な水産物の生産につながることを期待します。

 

IMTA研究のプロシーディング(SEAFDECのリポジトリ)https://repository.seafdec.org.ph/handle/10862/6335

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