2025年12月1日、フィリピン共和国ネグロス島において、国際農研(JIRCAS)はフィリピンの共同研究機関とともに、5年間の国際共同研究の成果を総括するシンポジウムを開催しました。主催は国際農研で、在フィリピン日本国大使館から遠藤和也 特命全権大使および赤坂英則 一等書記官が出席し、日比両国の協力の重要性が改めて確認されました。
今回のシンポジウムでは、「山・里・海の連環」をテーマに実施してきた熱帯島嶼環境保全プロジェクトおよび、気候変動総合プロジェクトの研究成果が報告されました。発表では、劣化した山地での早期緑化技術、農地における生産性向上と環境負荷軽減技術、森林・マングローブ保全、土壌炭素蓄積に関する試験研究など、山から沿岸域までを包括的に捉えた成果が共有されました。会場では、地域の食料安全保障や気候変動対策における日比協力の意義についても活発な意見交換が行われました。
シンポジウム後、遠藤大使は部分深耕機と深植プランターを用いたサトウキビ栽培技術のデモンストレーションを視察しました。ネグロス島はフィリピン最大のサトウキビ生産地域であり、この技術は多回株出し栽培の促進による生産性向上、省エネルギー化、土壌保全への貢献が期待されています。本技術は、国際農研とヤンマーアグリ株式会社(岡山市)、フィリピン農業省砂糖統制庁(SRA)が連携して開発を進めており、遠藤大使とSRAのアズコーナ長官との意見交換も行い、技術普及に向けた期待が高まっています。
国際農研は、今回得られた成果を基に、フィリピンおよび石垣島への技術普及をさらに推進するとともに、他の熱帯島嶼地域への展開も視野に入れています。山・里・海の連環を重視した総合的なアプローチは、気候変動対応や食料安全保障といった地球規模課題の解決に向けて、今後ますます重要な役割を果たすことが期待されます。