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1169. 2025年を迎えて

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1169. 2025年を迎えて

 

2025年もどうぞよろしくお願いいたします。

EUのコペルニクス気候変動サービスによると、2024年は産業革命前の水準と比べ1.5°Cを超えた温暖化を観測した暦上最初の年となりました。地球温暖化を産業革命前の水準から1.5〜2°Cに抑えるという国際的なコミットメントである2015年パリ協定の目標を一時的にも超えてしまったことになります。

今年最初のPick Upは、昨年末のNature誌が発表した2025年に注目すべき科学・研究イベントから、食料システム・農林水産業にも関連する話題 -減量特効薬・アメリカ新政権での気候環境政策・COP30・森林モニタリングー を紹介します。

 

減量特効薬

「奇跡の」薬であるウゴービ(セマグルチド:II型糖尿病の治療および長期的な体重管理に使用される、ノボノルディスクが開発したGLP-1受容体作動薬)等の大成功に続き、2025年には肥満を標的とした治療薬が承認される可能性があり、既存の治療法よりも製造が容易で、安価になる可能性があります。

2023年時点にて世界で11人に一人が飢餓に直面し、2030年までの飢餓撲滅が難航している一方、南北アメリカ・ヨーロッパ・オセアニアにおける成人人口の25%以上が肥満であり、近年では低・中所得国でも都市部で肥満が増加傾向にあります。肥満は心臓病・脳卒中・糖尿病などの憂慮すべき非感染性疾患(NCD)に関連しており、環境悪化や社会的不平等に関連するコストを上回っていると推計されます。地球の持続性のキャパシティに照らし合わせ、2050年までに100億人に迫るとされる世界人口に栄養ある食を提供するためには、肥満と低栄養が併存する食料システムの在り方を抜本的に見直す必要性があります。
 

 

米国の気候環境政策

ドナルド・トランプ氏は前任期中、パリ協定から米国を離脱させました。一部の研究者は再び米国が気候変動対策から撤退することを懸念しています。

➡アメリカでは政権が代わると、気候変動対策へのスタンスも大きく転換されるようです。

 

COP30周年

2025年11月にブラジルのベレンで開催される第30回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP30)において、各国は、2024年のCOP29会議で未解決のままになっている開発途上国支援のための資金調達に関して議論する予定です。

➡COP30では、熱帯林における気候変動対策に注目が集まります。

 

森林モニタリング

森林破壊と自然災害を宇宙からモニタリングする二つの衛星打ち上げが予定されています。NASAとインド宇宙研究機関の協力によるNISAR(NASA-ISRO Synthetic Aperture Radar)ミッションは、定期的に地球の陸地と氷に覆われた地表をマッピングします。フランス領ギアナから打ち上げられるバイオマスミッションは、レーダーを使用して炭素循環における森林バイオマスの役割を研究します。高精度で高頻度なデータに基づく新たな知見は、森林破壊抑止のコミットメントに関する議論に活かされる可能性があります。

➡ 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価統合報告書によると、農業・林業・その他の土地利用(AFOLU)関連の選択肢のうち、熱帯地域における森林破壊の削減は最大の緩和ポテンシャルを示します。一方、食料安全保障を含む複数の目的とのトレードオフを解消するには、需要側の対策(健康な食生活へのシフトや食料ロス・廃棄物の削減)や持続的な農業集約化が必要で、こうした対策はエコスステム保全やメタン・亜酸化窒素排出の削減に貢献することから、AFOLU対応策の実行は生物学的・社会経済的・そのほかの推進策を統合する、食料システムの視点での取り組みが必要となります。

➡2025 年には、2021年国連食料システムサミット(UNFSS)4年後フォローアップ会合も予定され、持続可能な食料システム変革推進にむけた、進捗の評価が行われる予定です。
 

 

(参考文献)
Miryam Naddaf. Science in 2025: the events to watch for in the coming year. 17 December 2024.Nature 637, 9-11 (2025) doi: https://doi.org/10.1038/d41586-024-03943-9

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)


 

 

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