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900. 熱帯林が直面する問題への取り組み

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900.  熱帯林が直面する問題への取り組み

 

Pick Up 900回目は、明日11月17日開催予定のJIRCAS国際シンポジウム2023テーマでもある熱帯林をとりあげます。

熱帯林は、生物多様性・エコシステムサービス・社会・文化的アイデンティティ・生業をサポートするのみならず、地域・地球規模の気候制御を通じて気候変動適応緩和に極めて重要な機能を果たしてきました。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価の第2作業部会(WG2)報告書- 影響・適応・脆弱性(Climate Change 2022: Impacts, Adaptation and Vulnerability)によると、1990年~2020年に観測された4.2億ヘクタールの森林喪失の90%が熱帯林地域で起きているとされ、生物多様性・環境サービス・森林コミュニティの生業と気候ショックに対する強靭性を脅かしています。

気候変動は、温度上昇や干ばつ・熱波等の頻度上昇を通じて、樹木の枯死を高め、樹の成長を減速させ、森林再生能力を損ねることで、熱帯林に大きな影響を及ぼします。大規模な熱帯林森林破壊は、地域・地球レベルの気候への影響を通じ、森林の強靭性を損ねます。

一方、持続可能な森林管理の戦略は、熱帯林エコシステムの気候変動適応能力を高め、一般に適応による便益はコストを大きく上回るとされています。気候変動に対する熱帯林の適応は、熱帯の国々にとってカーボン貯留や生物多様性保全への誘因を創出する森林政策を策定する機会を提供します。天然の樹種を様々に組み合わせた森林再生は、熱帯林の気候変動への強靭性を高めますが、その他の森林管理戦略や適応のための介入と整合性をとることで最も効果を発揮します。とりわけ、現地特有のコンテクストに基づいたローカルノーレッジを活用したコミュニティ・ベースの適応が求められます。

気候変動に強靭な熱帯林の構築には、適応策に合わせ、森林破壊・劣化の元凶となっている問題に取り組む必要があります。熱帯林の破壊は、自給的な農業あるいは商業農林産物(オイルパーム・木材プランテーション・ダイズ・家畜)といった農業の拡大が原因となっていることがほとんどです。

貧困と人口増に加えガバナンスの欠如が自給的農業による森林破壊をもたらす一方、商業農林産物の問題は商品作物に対する国際市場動向や大規模な土地獲得によります。

森林破壊の直接・間接的な原因に取り組むためのガバナンス向上に向け、環境への責任能力向上のための誘因やキャパシティ向上、規制の見直し、土地保有権や権利の認知向上、様々な科害関係者の意思決定参加、などが必要となります。


明日11月17日にハイブリッドで開催されるJIRCAS国際シンポジウム2023は、アジアの熱帯林に着目し、環境保全と持続可能な産業の共存を実現するために、実際に適用可能かつ具体的な熱帯林資源管理や制度等のイノベーションについて議論します。申込登録締め切りは本日17時となっています。是非参加をご検討ください。


JIRCAS 国際シンポジウム2023
強靭な熱帯林と持続的な産業の共存を実現するイノベーションに向けて

開催日: 令和5年11月17日(金)13:30~17:30
開催場所: ハイブリッド(国連大学ウ・タント国際会議場およびオンライン)
受付期間: 令和5年9月29日(金)9:00~令和5年11月16日(木)17:00
特設サイト: https://www.jircas.go.jp/ja/symposium/2023/e20231117_jircas
参加申込受付リンク: https://www.jircas.go.jp/ja/symposium/2023/e20231117_jircas/entry 


(文責:JIRCAS国際シンポジウム2023実行委員会)

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