JIRCAS国際シンポジウム2023
強靭な熱帯林と持続的な産業の共存を実現するイノベーションに向けて

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環境
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環境適応型林業

アジア・アフリカ・ラテンアメリカの赤道周辺低緯度地域は年間を通じて降水量が多く、熱帯林(熱帯雨林)と呼ばれる森林が広く分布しています。こうした熱帯林は、豊富な日射量のもとでの旺盛な光合成によって大気から大量の二酸化炭素を吸収、一説には陸域植生によるカーボンの40-50%を占めると推計される一方、多量の炭素を貯留し大きく成長した樹木は大型の動物から昆虫・小動物から微生物にいたるまで多様な生物に住処を提供することで極めて複雑な生態系を形成しています。このような熱帯林の炭素吸収・貯留能力と生物多様性は地球の気候・環境制御に大きな役割を果たしており、熱帯林は地球システムの安定化において、重要なサブシステムと位置づけられてきました。

熱帯林は、また、人類の生活に欠かせない木材や薬の原料・農作物の原種など天然資源を提供してきました。しかし、20世紀半ば以降のグローバリゼーションの中で、希少な天然資材の乱獲や、換金作物プランテーション転換が進行し、2021年には375万ヘクタールの熱帯原生林が喪失したと推計されています(WRI)。人為的な経済活動による森林破壊・劣化は、樹木や土壌に貯留されていた炭素の放出による温暖化、および生物圏の破壊による生物多様性の喪失、それらのフィードバックを通じ、地球の気候・環境制御の機能不全をもたらし、地球システム全体の攪乱を引き起こしかねません。

近年、気候変動対策・生物多様性保全に関する国際会議・交渉の場において、熱帯林の気候・環境制御の機能を強靭化する資源管理が求められると同時に、熱帯林産業由来の森林破壊を抑制するルールの必要性が議論されています。環境保全と持続可能な産業の共存を実現していくには、地域コンテクストにおいて、実際に適用可能かつ具体的な熱帯林資源管理や制度等のイノベーションを講じていく必要があります。

国際農研(JIRCAS)は、農林水産業研究分野での国際貢献と国内外連携の中核的な役割を担い、アジア・アフリカ・ラテンアメリカ地域の農林水産業課題に応える技術開発を通じ、SDGs達成に貢献しています。その一環として、アジア地域を中心に熱帯林を対象とした国際的な共同研究連携・協力を行ってきました。例として、気候変動に適応した森林遺伝資源利用と管理による熱帯林強靭性強化、および熱帯林における無秩序な森林破壊に代わりうるオイルパーム農園の持続的土地利用と高付加価値化、に貢献しうる技術開発や社会実装の取り組みが挙げられます。

以上を踏まえて、本シンポジウムは、世界およびアジア熱帯林の現場で活躍する研究者・企業・政策策定者らを招き、熱帯林の強靭性および産業の持続性を両立しうる機会および課題について議論の場を提供します。本年の2023年は、日本とASEANの友好協力関係50周年にもあたり、アジアの熱帯林に着目することで、熱帯林および地球システムの強靭化に貢献しうるアジア発イノベーションの提案を目指します。

ポスター・プログラム

主催

国際農林水産業研究センター

後援

農林水産省

森林研究・整備機構 森林総合研究所

開催日
2023年11月17日(金) 13:30~17:30(日本時間)
場所
ハイブリッド(国連大学ウ・タント国際会議場およびオンライン) (150-0001 東京都渋谷区神宮前5-53-70 国際連合大学UNU3階)
プログラム

時間

プログラム

登壇者

13:30-13:50

開会のあいさつ

小山修
国際農研理事長

歓迎のあいさつ

小坂善太郎
林野庁次長

浅野(中静)透
森林研究・整備機構 森林総合研究所 所長

13:50-14:30

基調講演 1

気候変動や森林火災に対する森林のレジリエンス

北島薫
京都大学 農学研究科 教授

基調講演 2

熱帯林と持続可能な産業に関する世界的な政策展開と取り組み

Dr. Sonya Dewi
CIFOR-ICRAF アジア担当部長

14:30-15:30

セッション 1

熱帯林のランドスケープと樹木の回復力の強化 

座長: 野口正二
国際農研 林業領域長

持続可能な森林管理と保全

Dr. Wan Mohd Shukri B. Wan Ahmad
マレーシア森林研究所 林業・環境部長

育種技術による熱帯林の強靱化と生産の向上

谷尚樹
国際農研 林業領域 主任研究員

森林減少のメカニズムと持続可能な解決策

宮本基杖
森林総合研究所 林業経営・政策研究領域 森林環境政策担当チーム長

15:30-15:50

休憩

 

15:50-16:50

セッション 2

熱帯木材/非木材製品の産業的持続可能性の向上

座長: 飯山みゆき
国際農研プログラムデイレクター

森林生産力の向上とインドネシアのNDCs達成に向けた林木育種プログラムの貢献

Prof. Mohammad Na'iem
ガジャマダ大学 林業学部 教授

熱帯林保全に向けたオイルパーム古木の高付加価値化技術

小杉昭彦
国際農研 生物資源・利用領域 プロジェクトリーダー

東南アジアにおける木材・オイルパーム産業の展開と国際的な熱帯林保全政策

鮫島弘光
IGES生物多様性と森林領域リサーチマネージャー

16:50-17:25

パネルデイスカッション

進行役 林 慶一 
国際農研 プログラムディレクター(環境)

基調講演登壇者、セッション1&2登壇者

17:25-17:30

閉会のあいさつ

山本由紀代
国際農研理事

受付期間
- (日本時間)
申込受付
国際農研 情報広報室
住所
茨城県つくば市大わし1-1
電話
029-838-6708
申込締切:
(日本時間)
参加費

無料

動画アーカイブ

【Part1:開会~基調講演】

 

 

【Part2:熱帯林のランドスケープと樹木の回復力の強化】

 

 

【Part3:熱帯木材/非木材製品の産業的持続可能性の向上】

 

 

【Part4:パネルディスカッション~閉会】

 

 

Proceedings
Innovations to enhance the resilience of tropical forests and sustainability of the forest industry
ポスター
問い合わせ先

国際農研 情報広報室

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