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736. 世界的に糖尿病と肥満のケースが増加

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736. 世界的に糖尿病と肥満のケースが増加

Nature誌のニュース面にて、2型糖尿病と肥満が世界的に上昇しており、とりわけ貧困な社会層の間で急速に増加しているという研究結果が紹介されました。2型糖尿病は血液中のブドウ糖(血糖)が正常より多くなる病気で、初期は自覚症状がほとんどありませんが、放置すると、徐々に全身の血管や神経が障害されて様々な合併症を引き起こすとされています。2型糖尿病は体質(遺伝)や高カロリー食、高脂肪食、運動不足などが原因と考えられ、現代の食生活が密接に関わってきています。

オリジナルの論文は3月7日にCell Metabolism誌で公表された研究であり、2000年から2019年の期間に、糖尿病だけでなく、高血圧と肥満関連の肝臓病の疾病率が上昇しており、3つの条件とも、食物をエネルギーに変換する代謝の問題と関わっていると発表しました。この期間、とくに糖尿病のケースは年率1.5%で上昇し、肥満や血中の高コレストロールは2019年にそれぞれ500万人、430万人の死に関わっていると推計されました。また、一人がしばし複数の問題を抱えていることも指摘されました。
 
研究はさらに、研究はさらに、健康寿命は、高所得国で改善しているものの、低・中所得国で急激に肥満によって短くなっていると指摘、ヘルスケアや健康な食、適度な運動に関する格差が代謝関連の負荷を悪化させていることは疑いがないと述べています。世界の多くの地域では、健康な食生活を送ることが、未だに高くつくということです。

先日のPick Upで紹介したように、2020年時点で健康的な食事をする余裕がない人は31億人にのぼり、とりわけ途上国地域で深刻であり、12か国(すべてアフリカの国)では、90%以上の人々がつねに健康的な食事を入手できす、データが存在する53か国で人口の半分以上に同じことが言えると推計されています。

こうした途上国においては、未だに飢餓の問題も抱えており、肥満・低栄養が併存するシンデミックの状況は、格差・貧困とも密接に関わっていることを示唆しており、現代の食料システムの在り方を根本的に見直す必要があるといえます。


(参考文献)
Nicholas W.S. Chew, et al, The global burden of metabolic disease: Data from 2000 to 2019,Cell Metabolism,Volume 35, Issue 3, https://doi.org/10.1016/j.cmet.2023.02.003.
(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1550413123000396)

Pick Up 731. 食料システムとシンデミックhttps://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20230307 

Pick Up 732. 健康的な食事のコストのグローバルな指標https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20230308

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)


 

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