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980. 世界的な低体重・肥満のトレンド

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980. 世界的な低体重・肥満のトレンド

 

低体重・肥満とも、人の一生を通じて健康に悪影響をもたらすことから、深刻な栄養不良の問題と捉えられています。
The Lancet誌にて、1990年-2022年期間における200か国・地域の成人(20歳以上)・学齢児童及び思春期青年(5-19歳)を対象とした身長体重測定調査に基づき、低体重・肥満に関するトレンドをとりまとめた論文が発表されました。


調査は、BMI(ボディマス指数:[体重 (kg)]÷ [身長 (m)の2乗]で算出される値)を用い、成人の場合、BMI が18·5 kg/m2を下回る場合を低体重、 BMI が30 kg/m2以上を過体重、と定義し、学齢児童及び青年世代に関しては、BMIが標準偏差の2倍よりも小さい場合をやせ、BMIが標準偏差の2倍よりも大きい場合を肥満、と定義しました。

1990年から2022年にかけて、女性については11か国(全体の6%)、男性については17か国(9%)において、成人における低体重および肥満を抱える人口比率の双方ともが減少しました。一方、女性については162か国(81%)、男性については140か国(70%)で、低体重・肥満とも上昇したことが報告されました。2022年、低体重と肥満の成人人口比率が最も高かったのは、カリブ諸国やポリネシア・ミクロネシアなどの島嶼国や、中東・北アフリカ諸国でした。

同様の傾向は学齢児童・青年世代についてもいえ、1990年から2022年にかけ、女児については5か国(3%)、男児については15か国(8%)において、やせ・肥満人口比率とも下落したのに対し、女児で140か国(70%)、男児で137か国(69%)においてやせ・肥満人口比率が上昇しました。やせ・肥満人口比率は女児・男児ともポリネシア・ミクロネシア・カリブ諸国で高く、男児ではチリとカタールが抜きんでていました。インドやパキスタンといった南アジア諸国においては、やせ人口比率は減少しているものの根強く残っています。2022年、学齢児童・青年世代において、肥満がやせを上回ったのは女児で133か国(67%)、男児で125か国(63%)と、その逆のケース(やせが肥満を上回る)を大きく超えていました。

以上のトレンドは、多くの国における二重負荷の悪化は肥満人口の増加によるもので、南アジアやアフリカの一部では低体重・やせが根強く残っていることを意味します。低体重問題を撲滅し、肥満増加傾向を反転させるためには、栄養に富む食へのアクセス改善を保証する社会への移行推進の努力が強く求められます。

 


(参考文献)
NCD Risk Factor Collaboration (NCD-RisC) Worldwide trends in underweight and obesity from 1990 to 2022: a pooled analysis of 3663 population-representative studies with 222 million children, adolescents, and adults 
February 29, 2024. DOI: https://doi.org/10.1016/S0140-6736(23)02750-2


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 


 

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