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16. 新型コロナウイルス・パンデミック ― 世界銀行速報:アジア太平洋地域の開発途上国 大幅な成長鈍化の可能性

世界銀行 (World Bank)は、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)により、アジア太平洋(EAP)地域の開発途上国の経済成長率が2019年の+5.8%から2020年には+2.1~-0.5%と大幅に鈍化するという分析結果を公表しました。観光に関わるサービス業が最も深刻な影響を受けると見られる一方、農業生産額も3%前後減少すると予測されています。また、EAP地域には農業従事者割合が高い国が多く存在するため、公的な社会保障へのアクセスが困難な小規模農家の所得や健康に大きな影響が及ぶといった問題が危惧されています。世界銀行は、各国の大胆な国家的行動とより深い国際協力の必要性を訴えています。

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15. 新型コロナウイルス・パンデミック ―世界貿易減少と商品作物輸出依存途上国への影響

熱帯・亜熱帯地域の高地に位置する途上国では、従来、茶・コーヒーなどの輸出商品作物栽培がさかんですが、最近では主要仕向け地への航空貨物ネットワークの確立により、花卉・園芸産業も急激に輸出を伸ばし、グローバル・バリューチェーンに大きく組み込まれています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックは、国際需要の落ち込みと国際線停止によって、商品作物輸出に依存する途上国に大打撃を与えています。2020年4月8日、世界貿易機関 (WTO)は、2020年の世界貿易量が13-32%落ち込むことを予測、人々の生活を守るために前例のない措置をとる必要性を訴えました。とりわけ商品作物に外貨獲得・GDP・雇用創出を依存する食料輸入国の食料安全保障状況について注視していく必要があります。

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14. 新型コロナウイルス・パンデミック ― 世界銀行速報:サブサハラ・アフリカ25年ぶりの経済不況へ

2020年4月8日、世界銀行 (World Bank) は、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の影響により、サブサハラ・アフリカ (SSA)地域の経済成長率が2019年の+2.4%から2020年には-2.1~-5.1%のマイナス成長に転じるとし、25年ぶりの不況を予測しました。とりわけナイジェリア・南アフリカ・アンゴラなど石油・鉱物輸出依存国やエチオピアやケニアなどグローバル・フード・バリューチェーン参加国が大きな打撃を受ける一方、輸出・移動規制の影響等もあり、農業生産も2.6%~7%も縮小することが見込まれています。世界銀行は、SSA政府の支援を通じ、COVID-19に伴うアフリカ食料危機の発生を何としてでも回避する必要性を訴えました。アフリカ開発会議(TICAD)を通じ、アフリカを成長著しい21世紀最大のフロンティアとして官民一体で開発を力強く支援する立場をとってきた日本も、国際社会と協調していく必要があります。
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13. 熱帯・島嶼拠点@石垣島における熱帯果樹研究

近年、世界的にも観光地として注目を浴びている石垣島は、地理的には沖縄本島よりも台湾に近く、気候的には亜熱帯地域に属します。国際農研は、日本の農業研究機関では唯一熱帯作物の栽培環境での実証研究が可能な石垣島に研究拠点を持ち、国内外の農業に貢献するために大きな使命を担っています。その一環として、開発途上国と日本の双方における熱帯果樹生産の促進に貢献することを目的とし、マンゴーとパッションフルーツの研究を行っています。これらフルーツはビタミンなどの栄養素に富み、また商品価値も高く、優れた品種育成につながる研究は、国内外の消費者・生産者双方の利益になると期待されます。

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12. 新型コロナウイルス・パンデミック ― アフリカの模範国:ルワンダの農業が直面する課題

アフリカの内陸国ルワンダにおいて、約100日間に50万人以上が命を落としたとされる大虐殺から、2020年4月7日で早くも26年が経ちます。 この間、観光産業、ICT、都市インフラへの投資は目覚しく、ルワンダは、紛争後の再建に成功した模範国として挙げられ、医療分野でもアフリカの成功例として称えられています。新型コロナウィルス (COVID-19) に関しては 、政府は前年にエボラ感染を阻止した経験を活かしつつ、ロックダウンを開始しました。そんなルワンダですが、経済の根幹を担うのは未だに小規模農業です。日本の人口密度を遥かに超える過度な人口圧力の下、農地の細分化・狭小化が進行しており、持続的な栽培技術と体系が求められています。同時に、栄養の面からも、多様な食品を摂取する必要性があります。

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11. 新型コロナウイルス・パンデミック ― 国際貿易と食料安全保障

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による移動規制・都市封鎖 (ロックダウン)に際し、グローバル・フードチェーンはその頑強性(robustness)・強靭性(resilience)が試されています。国際社会が世界的な食料危機を乗り越えるには、国際貿易の動向についての情報もしっかりモニターしていく必要があります。全農産物の貿易額は2000年から2018年に額面で3倍、重量ベースで約2倍に拡大しました。日本は穀物貿易において世界第三位の輸入国であり、カロリーベースの食料自給率が37%である原因の一つが、メイズ(トウモロコシ)を主原料とする畜産飼料の海外依存です。コメの国際貿易においては、意外にもアジアから中東・アフリカへの流れが大きく、一人当たりのコメの消費量が日本よりも多い純輸入国も多くあります。近年、アフリカのコメ消費量は都市化と人口増加で年々増えており、籾収量と作付け面積双方の持続的な増加に貢献する技術が、自給率向上の鍵となります。
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10. 新型コロナウイルス・パンデミック ― 中央サヘル地域における人道・食料危機:ブルキナファソのケース

2020年4月2日、国連世界食糧計画(WFP)は、アフリカのブルキナファソ・マリ・ニジェールを中心とする中央サヘル地域の食料不安が「制御不能になりつつある」と強い懸念を表明しました。中でもブルキナファソは、人間開発指数で189か国中182番目にランクする最貧国ですが、近年度重なる干ばつと過激派の活動により、国内避難民が急激に増加する一方、全国のヘルスセンターが閉鎖され、医療制度が弱体化しています。この度の新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 対応により、学校閉鎖によって給食が唯一の栄養源だった児童への影響が懸念され、さらに移動制限によって物流が滞り外部からの援助も受けられなくなる可能性があります。WFPは、今年6月までに食料安全保障の危機に直面する人口が、昨年同時期の3倍に達しうると予測し、国際社会に支援の必要性を訴えました。

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9. 新型コロナウイルス・パンデミック ― 輸出規制・保護主義回避の必要性:2008年世界食料危機からの教訓

COVID-19パンデミックにより、世界各国で外出自粛や移動制限の実施への対応として、食料品の買い占め・買い溜めに走る消費者の姿がニュースとなり、食料確保のために備蓄・輸出禁止に乗り出した国も報告されています。2020年4月現在、世界的には主要穀物に関して十分な備蓄があるとされていますが、今後食料安全保障のナショナリズムが台頭し、グローバル・フード・サプライシステムの機能不全をもたらせば、2008年リーマン・ショック時と同時期に発生した食料価格危機の再来も懸念されます。食料輸出国による輸出規制の連鎖と食料価格急騰により最も影響を受ける可能性があるのが、サブ・サハラアフリカ諸国、そして日本のような食料純輸入国です。国連の食糧農業機関(FAO)・世界保健機関(WHO)・世界貿易機関(WTO)事務局長は、共同声明において、世界中の人々が食料安全保障と生活のために国際貿易に依存している今日、国際社会は輸出制限の回避に協調しなければならないとしました。

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8. 新型コロナウイルス・パンデミック ― 世界食料危機への国際社会による対応

2019年12月に発生が確認された新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の影響は、今や世界中に及んでいます。今後、サブサハラ・アフリカ地域を含む医療体制の脆弱な低所得国への拡大により、社会・人道的危機に加え、世界食料・栄養安全保障危機の悪化が懸念されています。2020年3月26日夜、日米欧や新興国を含む20カ国・地域(G20)の首脳が史上初のテレビ会議を開き、パンデミックの経済的な打撃に対処するとの声明を発表しました。グローバル社会の強靭性を強化する上で、保健制度及び経済が脆弱な開発途上地域、特にアフリカおよび小島嶼国が直面する危機を深刻に懸念し、コミュニティに対する能力及び技術支援を強化するために資金を動員することを約束しました。
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7. イネ遺伝資源に関する国際共同研究体制の必要性

日本では様々なコメの品種改良が行われ、国内各地域に適応したコメ品種が生みだされてきました。一方で、世界の貧困地帯は熱帯などの開発途上地域に集中しており、コメも主要な食料の一つとして利用されています。近年、温暖化や異常気象が進む中、コメの品質が低下したり、安定的に十分な収量を得られなくなることも危惧されています。気候変動による天候不順等に備え、コメの安定生産を図ることが、開発途上地域の貧困の解決や社会の安定化、ひいては日本の食料安全保障にも大いに貢献することになります。国際農研では、コメ遺伝資源および育種素材の保存と利用に向けた国際的な協力体制の確立に貢献するため、育種素材の確保とそれらに対する基礎データベースの開発に取り組んでいます。

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6. 気候変動と世界食料生産危機 - 持続的資源・環境管理技術への期待

2019年、権威ある国際機関がこぞって気候変動と環境劣化の進行が予想以上に進行していることに警鐘を鳴らしました。環境劣化・気候変動は農業への負のインパクトをもたらすと同時に、農業自身が環境劣化と気候変動の主要な原因の一つでであることにも着目しなければなりません。農林業その他土地利用(Agriculture, Forestry and Other Land Use -AFOLU)は、人間活動を原因とする温室効果ガス(GHG)の23%を占め、AFOLUの変化はまた、人間活動に起因する生物多様性の喪失の主要な原因となっています。食料・栄養安全保障の達成を目指しつつ、将来取り返しのつかないリスクを回避するためには、AFOLUによる気候変動や環境への負の影響を最小化していく技術開発と普及が必要です。国際農研は、水・土壌・肥料等の農業資源を持続的、安定的に活用しつつ、生産性を改善する技術開発を通じて、農業の持続的集約化の実現と気候変動問題への貢献を目指しています。

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5. 熱帯等の不良環境における農産物の安定生産技術の開発

アフリカをはじめとする開発途上地域には、土壌の低肥沃度や干ばつ等の不良環境のために農業生産の潜在能力が十分に発揮できていませんが、こうした地域の小規模農民の多くは、気候変動をもたらす原因に最も関与していないにもかかわらず、最大の被害を被ることが予測されています。世界的に貧困・飢餓の撲滅を達成するには、土壌や水資源に恵まれない熱帯等の開発途上地域における食料増産・安定化を推進するための技術開発が極めて重要です。国際農研では、アフリカをはじめとする開発途上地域において、農産物の安定生産技術の開発に取り組んでいます。

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4. ウユニ塩湖のキヌア -「スーパーフード」孤児作物研究の意義

“世界一の「奇跡」と呼ばれた絶景”として有名なボリビアのウユニ塩湖ですが、その近辺の畑地は塩分濃度が高く、作物にとっては不毛の大地です。こうした厳しい環境でも育つ極めて希少な作物に、近年「スーパーフード」として注目を浴びているキヌア(quinoa)があります。世界各地には、栄養価に優れながら、品種改良のための研究が十分行われてこなかった作物が多くあり、これらは「孤児作物 (orphan crops)」などと呼ばれています。国際農研は、キヌアの品種改良・高付加価値化への道筋をつけるのみならず、厳しい環境・気象条件に適応する作物のメカニズムを明らかにすることで、気候変動に対する育種戦略への知見を得ることを目指しています。

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3. 世界の食料・栄養安全保障に関する農業研究の視点の変化

持続可能な開発目標(SDGs)では、飢餓の撲滅が目標の1つに掲げられています。また、今年2020年12月には「東京栄養サミット2020 (Tokyo Nutrition for Growth Summit 2020)」が開催されます。栄養不足、微量栄養素不足、肥満などの栄養不良は喫緊の地球規模課題です。農業は今、いかに地球に負担をかけずに健康的な食料を安定的に供給できるシステムを構築できるかが求められています。国際農研では、アフリカの農村部で農家調査を行い、食事や栄養供給についての実証分析を進めています。実効性のある農業・栄養介入の方法を探り、世界の食料・栄養安全保障への貢献を目指しています。

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2. サバクトビバッタの予防的防除技術の開発に向けて

サバクトビバッタ(Schistocerca gregaria)は現在、東アフリカ、アラビア半島、インド・パキスタン国境沿いで猛威を振るい、深刻な食糧危機を引き起こしています。このバッタによる被害は世界人口の1割に、地球上の陸地面積の2割に及び、年間の被害総額は西アフリカ地域だけでも400億円以上に達する地球規模の天災として恐れられています。現在はコロナウイルスの問題も併発し、国を越えた支援活動に大きな支障が出ることが懸念されています。国際農研は、豊富な海外での研究活動の経験を生かし、サバクトビバッタの屋外における行動習性の研究を通じて、大発生の予知を可能にし、環境保全を考慮した持続的な防除システムの構築を目指します。

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1. 持続可能な開発目標(SDGs)と農業研究 - 国際農研@50周年

国際農研は今年2020年で創立50周年記念を迎えます。これを機に、国際農研の情報収集・提供プログラムでは、気候変動や食料問題などに関する世界のニュースや話題をピックアップし、その分野と関連する国際農研の研究活動を紹介するコーナーを設けることにしました。第一回目である本稿では、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献するための農業研究の必要性を概観します。今後も、話題のニュースと国際農業研究を絡めたトピックを取り上げていきますので、ご期待ください。

文献レビュー

World Agroforestry他共編「クライメート・スマート・アグリカルチャー  [Climate-Smart Agriculture: Enhancing Resilient Agricultural Systems, Landscapes, and Livelihoods in Ethiopia and Beyond]」概要

クライメート・スマート・アグリカルチャー(CSA)は、生産性向上と気候変動適応・緩和という3つのゴールを同時に達成しうる技術アプローチを指す概念として認知されるようになってきた。World Agroforestry (ICRAF)が、オレゴン州立大学・メケレ大学・WeForest・JIRCASと共同で編纂した本書は、エチオピアを事例に、学術・研究・政策・普及・開発分野の関係者に対し、サブサハラアフリカ地域において適切なCSA技術・慣行・政策を適用する際の手引きを提供することを目指す。
国際機関動向

世界経済フォーラム (World Economic Forum) (2020)「グローバル・リスク報告書 2020: Global Risk Report 2020」概要

ダボス会議の2020年グローバル・リスク報告書によると、世界のリーダーが今後起こり得るとする上位5つのリスク全てが環境問題・気候変動に関する懸念であった。報告書は、世界のリーダーに向け、社会的分断を修復し経済成長を持続させるための早急な対策を講じなければ、気候危機や生物多様性の損失を回避することは不可能である、と警告した。その上で、政策立案者に対しては経済成長と地球システムの保護を両立させる必要性を、民間企業に対しては将来の壊滅的な損失を回避するために科学的な知見を参照する必要性について、訴えた。
国際機関動向

国際連合食糧農業機関(FAO) (2019)「農業・農村におけるデジタル・テクノロジー: Digital technologies in agriculture and rural areas – Status report.」概要

今日、世界のフード・システムは十分な食料を供給できてはいるが、今後増え続ける食料需要に対し、持続的かつ包括的な食料供給を可能にするためには、アグリフード・システムの在り方を早急に変えていかなければならない。第四次産業革命 (Industry 4.0)は、社会のあらゆる分野におけるデジタル技術を通じた破壊的な革新をもたらしているが、農業もその潮流から逃れられない。次の農業革命は、疑いなく、デジタル技術を活用としたものになるであろう。
国際機関動向

国際連合環境計画(UNEP)「Emissions Gap Report 2019(温室効果ガス排出抑制目標ギャップ報告書)」概要

国連環境計画(UNEP)の報告によると、過去10年間、世界の温室効果ガス排出は年率1.5%で増加を続け、2018年には二酸化炭素換算で史上最高の553億トンに達した。2020年から2030年の間、温室効果ガス排出を毎年7.6%減らさなければ、パリ協定のゴールを達成し、気候変動によるインパクトを抑制するための機会を逃しかねない。