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12. 新型コロナウイルス・パンデミック ― アフリカの模範国:ルワンダの農業が直面する課題

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ルワンダ

アフリカの内陸国ルワンダにおいて、約100日間に50万人以上が命を落としたとされる大虐殺から、2020年4月7日で早くも26年が経ちます。この間、観光産業、ICT、都市インフラへの投資は目覚しく、ルワンダは紛争後の再建に成功した模範国として挙られてきました。医療分野でもアフリカの成功例として称えられることも多く、およそ1300万人の国民の9割近くにユニバーサル・ヘルスケアの提供を達成したとされ(WHO Africa) 、さらにアフリカで初めてドローンで輸血用血液を含む医療品を運ぶベンチャーが開始されたことで知られています (BBC World Service)。前年の2019年にエボラが隣国のコンゴ民主共和国 (DRC)で発生した際も、国境封鎖等や衛生システムの強化を通じて、ルワンダでの流行を食い止めに成功したとされています(WHO)。

新型コロナウィルス (COVID-19)に関しては 、2020年3月中旬に一人目の感染者が確認され、4月6日時点で105人が感染したと報告されています(worldometer)。エボラ感染を阻止した経験を活かし、ルワンダ政府は、今回も迅速にチェック体制強化を行い、3月21日には2週間の都市封鎖(lockdown)を開始、この措置は4月19日まで延長されました (The New Times, April 6, 2020) 。国境は封鎖されるものの、物資輸送や食料品・必需品を取り扱う商店や医療機関は業務を続け、民間・官公庁ではICTツールを活用した業務遂行が奨励されるとのことです(The New Times, April 2, 2020)。ただ、内陸国ゆえに、国境封鎖と移動規制は大きな制約を伴います。3月中旬、食料価格の上昇を受け、政府は食料品に対する価格規制と一人当たり購入量の制限を導入し、違反した取引業者には罰則を行っていることをTwitter等で公表しています(Atlantic Council; The New Times, April 2, 2020)。

そんなルワンダですが、経済の根幹を担うのは未だに農業です。とくに北西部地域は「千の丘」とも称される急峻な丘陵地帯からなり、熱帯でありながら標高1700~2300mでの温暖湿潤な気候と、稀少なマウンテンゴリラ生息地としても有名な火山地帯周辺の肥沃な土壌が、高い人口密度の下での小規模農業を支えてきました。主食作物として食用バナナ・サツマイモ・ジャガイモ、タンパク質・ビタミン源として食用豆類・野菜・果物などが栽培されています。他方、現在までにルワンダの人口密度は525人/km2と、日本の347人/km2をゆうに上回っています(worldometer)。過度な人口圧力の下、相続を通じた農地の細分化・狭小化が進行しており、農民にとり、環境を保全しつつ、多様な農作物から得られるベネフィットを最大化する持続的な栽培技術体系が求められています(Iiyama et al. 2018)。

また、農村の人々は、栄養面でも課題を抱えています。お茶の水女子大と国際農研が北西部農村4世帯の1日の食事を調査したところ、貧しい世帯は朝食や昼食抜きで一日1~2食で済ますこと、他方、貧富のレベルにかかわらず、メニューが炭水化物と豆の煮込みと単調であることが伺えました。イモ類がタンパク質・鉄分源となっている一方、ビタミンAなどの重要な栄養素が足りておらず、緑黄色野菜をメニューに加える必要性が明らかになりました(Sudo et al. 2020)。

 

参考文献

Atlantic Council. Rwanda’s successes and challenges in response to COVID-19. AfricaSource by Neil Edwards. March 24, 2020. https://atlanticcouncil.org/blogs/africasource/rwandas-successes-and-challenges-in-response-to-covid-19/ Accessed on April 7, 2020

BBC World Service. Drones in Africa: How they could become lifesavers, April 7, 2020. https://www.bbc.com/news/business-51837296   Accessed on April 7, 2020.

Tanno Y, Sudo N, … Iiyama M. (2020) Recommended modification of porridge and mixture to improve nutrient intake in the rural area of northern Rwanda. Afr. J. Food Agric. Nutr. Dev. 20(2): 15637-15659. DOI: 10.18697/ajfand.90.19285

Iiyama M, et al. (2018): Addressing the paradox – the divergence between smallholders’ preference and actual adoption of agricultural innovations, International Journal of Agricultural Sustainability, 16:6, 472-485,DOI:10.1080/14735903.2018.1539384

The New Times. COVID-19: Rwanda extends lockdown by 15 days. April 2, 2020.  https://www.newtimes.co.rw/news/covid-19-rwanda-extends-lockdown-15-days.  Accessed on April 7, 2020.

The New Times. Rwanda confirms one more COVID-19 case. April 6, 2020.  https://www.newtimes.co.rw/news/rwanda-confirms-one-more-covid-19-case  Accessed on April 7, 2020.

WHO. WHO applauds Rwanda’s Ebola preparedness efforts. July 24, 2019. https://www.who.int/news-room/detail/24-07-2019-who-applauds-rwanda-s-ebola-preparedness-efforts 

WHO Africa. Universal Health Coverage in Rwanda https://www.afro.who.int/node/9169   Accessed on April 7, 2020.

WHO Africa. Rwanda: the beacon of Universal Health Coverage in Africa. https://www.afro.who.int/news/rwanda-beacon-universal-health-coverage-africa  Accessed on April 7, 2020.

worldometer. Coronavirus.  https://www.worldometers.info/coronavirus/country/rwanda/  accessed on April 7, 2020.

外務省「ルワンダ共和国」https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/rwanda/index.html  Accessed on April 7, 2020.

 

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)

Farming on steep slopes in northwestern Rwanda

Rwanda is one of the world's leading bean consumers

Stewed carbohydrates and beans

Fruits sold in the market

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