文献レビュー
World Agroforestry他共編「クライメート・スマート・アグリカルチャー [Climate-Smart Agriculture: Enhancing Resilient Agricultural Systems, Landscapes, and Livelihoods in Ethiopia and Beyond]」概要
サブサハラ・アフリカ諸国の小規模農業システムは、水・土壌・自然資源のエコシステム・サービスにより支えられている。過去数十年間に人口が倍増する一方で農業生産性が停滞する中、食料・燃料・所得源への需要増を満たす上で農地拡大が進み、それに伴い、森林破壊と土壌劣化が進行してきた。小規模農民が拠り所としてきたエコシステムがダメージを受けることで食料安全保障が脅かされているが、近年ではさらに気候変動が追い打ちをかけている。
クライメート・スマート・アグリカルチャー(CSA)は、気候変動の影響が深刻化していく昨今、生産性向上と気候変動適応・緩和という3つのゴールを同時に達成しうる技術アプローチを指す概念として認知されるようになってきた。CSA概念自体はシンプルであるが、実際には、圃場レベルでの土壌・水管理、流域レベルでの自然資源管理、脱炭素可技術推進のための政策メカニズム、など、幅広い技術・慣行・政策もCSAに含まれうる。また、アフリカにおける小規模農民の置かれた多様な生態系・社会制度を鑑みれば、あらゆる地域や場面で万能薬的に適応可能なCSAは存在しない。実践の際には、対象地域の課題に応じて、圃場・流域・政策にまたがるスケールで複数のCSA技術・慣行・政策を組み合わせていくことも必要である。
本書の目的は、エチオピアを事例に、学術・研究・政策・普及・開発分野の関係者に対し、サブサハラアフリカ地域において適切なCSA技術・慣行・政策を適用する際の手引きを提供することにある。本書は、World Agroforestry (ICRAF)により、オレゴン州立大学・メケレ大学・WeForest・JIRCASとの共同で編纂された。
より詳しい内容に関しては、以下の報告書原文を参照のこと
Climate-Smart Agriculture: Enhancing Resilient Agricultural Systems, Landscapes, and Livelihoods in Ethiopia and Beyond. 2019. Kiros Meles Hadgu, Badege Bishaw, Miyuki Iiyama, Emiru Birhane, Aklilu Negussie, Caryn M. Davis, and Bryan Bernart, Editors. World Agroforestry (ICRAF), Nairobi, Kenya.