国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

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1. 持続可能な開発目標(SDGs)と農業研究 - 国際農研@50周年

2020-03-08

近年、世界的に豪雨・洪水・干ばつ・山火事などの異常気象が頻発に発生し、連日ニュースを賑わすようになっています。日本でも、大型台風が頻繁に襲来し、猛暑や暖冬が当たり前のこととなり、地球規模の気候変動に起因すると思われる問題が日々の生活・経済に深刻な影響を及ぼしつつあることに認識が高まっているのではないでしょうか。

気候変動の影響をもろに受けるとされているのが農林水産業であり、日本・開発途上地域ともに大きな影響が出ています。日本の農林水産業部門が少子高齢化の進行に直面しているのに対し、開発途上地域では、気候変動の不確実性に対応しながら、増え続ける人口に食料を供給することが課題です。国連によると、2019年に77億人の世界人口は2050年には100億人近くに達し、サブサハラアフリカの人口は倍増するとされています(UN 2019)。世界都市人口の割合は現在の55%から68%に達するとされ、25憶人の増加のうち90%近くがアジアとサブサハラアフリカでおこると予測されており(UN 2018)、都市化と所得増に伴う食生活の欧米化によって、農林水産物への需要が量・質ともに増加することが見込まれています。

他方、開発途上地域といっても、熱帯・亜熱帯・温帯乾燥地域等にまたがる各国・各地域の固有な条件に応じて、気候変動の農林水産業への影響も様々です。さらに、新興国の急速な経済発展により開発途上地域における格差は拡大し、農林水産業開発ニーズも複雑化・多様化しつつあります。水資源や土壌に恵まれず、未だに貧困・栄養失調を抱え、食料増産や多様化ニーズの高い農業国・地域もあれば、グローバルフードバリューチェーンに既に組み込まれ、加工技術の高度化等を射程に入れた振興国・地域もあります。いずれの場合も、農林水産業は雇用創出・産業化促進の役割も期待されています。

カロリーベースで6割強の食料供給を海外に依存する日本にとり、開発途上地域の需要動向に左右されうる世界レベルでの食料安全保障の確保は他人事ではなく、技術協力を通じた貢献が期待されています。一方、20世紀に先進国や新興国等で食料増産を可能にしたハイインプット・ハイアウトプット型の農業技術は、水資源や化学肥料を大量に必要とし、生物多様性を含む地球環境に無視できない影響を及ぼした側面があったことは否めません(Springmann et al. 2018)。21世紀のフードシステムは、気候変動による異常気象に対応しつつ、地球システムに負荷をかけずに質・量両面での食料安全保障を達成するという大きな課題に直面しています (Tamburino et al. 2020) 。

2015年9月に国連で採択された持続可能な開発 (SDGs)は、今や国内外で広く認知され、2030年までに世界が協調して達成すべき17のゴール・169のターゲットに向かって多面的な活動が展開されています (World Bank 2018) 。気候変動や環境劣化など将来取り返しのつかないリスクを回避しつつ、持続可能な開発を達成するには、生産性・資源利用効率性を最大化する農林水産業システムの転換が必要であるとの認識が高まっています (Sachs et al. 2019) 。同時に、国・地域毎に多様でかつ刻々変化するニーズを見極めながら、デジタル・スマート農業など最新ツール等も活用し、新たな農林水産業研究体制を確立することが求められています。

国際農研は、1970年に熱帯農業研究センター(TARC)として創立して以来半世紀にわたり、開発途上地域における我が国の農林水産業分野の国際共同研究のフロントランナーとして活動を続けてきました。国際農研は農林水産業の全分野をカバーし、学際的・異分野連携による共同研究を世界的に展開し、開発途上国等の共同研相手国の課題解決に直接貢献してきた歴史を有します。他方、今日の地球規模課題・国際環境の変化は速く複合的です。国際農研では、50年の歴史に基づく強みを活かしつつ、今後も重要性を増していく地球規模課題を見据え、農林水産業分野における国際共同研究と情報収集・提供を通じ、SDGs達成への貢献を目指していきます。

50周年を機に、国際農研の情報収集・提供プログラムでは、気候変動や食料問題などに関する世界のニュースや話題をピックアップし、その分野と関連する国際農研の研究活動を紹介するコーナーを設けることにしました。SDGsを取り上げた今回が第一回目となります。今後も、話題のニュースと国際農業研究を絡めたトピックを取り上げていきますので、よろしくお願いいたします。

 

参考文献

 

JIRCAS HP. SDGs(持続可能な開発目標)持続可能な開発のための2030アジェンダ 国際農研の取組 https://www.jircas.go.jp/ja/about/sdgs

Sachs et al. (2019) Six Transformations to achieve the Sustainable Development Goals. Nature Sustainability. https://www.nature.com/articles/s41893-019-0352-9

Springmann et al. (2018) Options for keeping the food system within environmental limits.  Nature.       https://www.nature.com/articles/s41586-018-0594-0

Tamburino et al. (2020) From population to production: 50 years of scientific literature on how to feed the world. Global Food Security. 

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2211912419301798?via%3Dihub

United Nations (2019). World Population Prospects 2019 

https://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20190618 

https://population.un.org/wpp2019/Publications/Files/WPP2019_10KeyFindings.pdf

United Nations (2018). 2018 Revision of World Urbanization Prospects.

https://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20180523;

https://www.un.org/development/desa/publications/2018-revision-of-world-urbanization-prospects.html

World Bank (2018) Atlas of Sustainable Development Goals 2018: From World Development Indicators

https://elibrary.worldbank.org/doi/book/10.1596/978-1-4648-1250-7

 

(文責:研究戦略室  飯山みゆき)