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1044. 持続可能な開発目標(SDGs)を2050年まで延長すべき

 

1044. 持続可能な開発目標(SDGs)を2050年まで延長すべき

 

6月17日、Nature誌において、著名な科学者らが、持続可能な開発目標(SDGs)を2050年まで延長すべきと表明、そのロードマップを提案しました。 

よりよい世界の創造を目指すSDGsは、政府、市民社会、民間部門から広く支持を受けてきました。しかし、2030年の期限が近付くにつれ、多くの開発目標は達成できないのではないかという認識が広がりつつあります。その原因として、目標が設定された2015年には予期できなかったCOVID-19パンデミックや紛争・戦争の勃発が指摘されています。多くの低・中所得国はパンデミック後に債務に陥ることで開発が後退しています。また、SDGのアクションもしばし縦割りに阻まれ、戦略の足並みが揃っていないことも原因の一つとされます。

例えば、多くの国においてCOVID-19復興パッケージは再生エネルギー投資ではなくカーボン集約的な産業に注入されたのに対し、パリ協定に向けたコミットメントにおいて所得・貧困・雇用・保健・教育といったSDGs横断的な配慮をした国は殆どいませんでした。

SDGsの達成は、教育・保健・エネルギー・土地利用・都市インフラ・デジタルプラットフォーム・金融等、ありとあらゆるセクターの在り方を総合的・抜本的に転換することが求められています。

以上を踏まえ、科学者らは、9月に控えた国連未来サミットに向け、加盟国に対しSDGを2050年まで延長することを提案、その一環として、科学に基づき、2030、2040、2050年ごとに野心的ながら達成可能な国・グローバルレベルの暫定的ターゲットを設定することを提唱しました。

 

例えば、SDG2 ゼロハンガー・「飢餓をゼロに」については、次を提案しています。

  • 2030年まで:緊急の飢餓や低栄養状態にある社会層の問題を解決するための補助的栄養プログラムの採択
  • 2040年まで:食料安全保障達成に向けた食料生産の向上、食料廃棄物・ロスの削減、エコシステムの保全、を推進する持続的な農業プログラムの採択
  • 2050年まで:気候変動対策ゴールと整合的でネットゼロ排出を達成する食料システムの実現


2050年に向けたSDGsを採択するにあたり、論考は、全ての関係者の対話の重要性、AIなど最新技術の活用、プラネタリーヘルスの配慮、測定可能で実現可能な指標の設定、などを訴えました。論考は、包括的なアプローチをとることで、今世紀半ばまでに国際社会は誰も取り残すことなく持続的な開発を実現しうるだろう、と結んでいます。


(参考文献)
Francesco Fuso Nerini et al, Extending the Sustainable Development Goals to 2050 — a road map, Nature 630, 555-558 (2024)  https://doi.org/10.1038/d41586-024-01754-6

 


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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