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573. 生物多様性の国際的枠組みをめぐる動向

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573. 生物多様性の国際的枠組みをめぐる動向

2010年、名古屋で開催された国連生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)にて採択された「愛知目標」は、2020年までに生物多様性の喪失を食い止めることを目標にしました。しかしその殆どは満たされなかったと評価されており、ポスト2020年目標を定めるための交渉準備が進められてきました。

今年はじめ、Pick Upにて、2022年は生物多様性アジェンダが達成可能かどうかの運命を握っているとのNature誌論説を紹介しました。 国際社会は、2030年までに生物多様性の喪失を減速させ、2050年までに生物多様性が保全されることを目指しています。その目標を定めるグローバル生物多様性枠組み(GBF:Global Biodiversity Framework)が議論される予定であったCOP15は、コロナ禍もあって何度か延期の憂き目にあってきました。今年4月末~5月上旬に、中国・昆明で予定されていたCOP15もCOVID-19 パンデミックで延期になりました。

このたび、ようやく12月に開催地をカナダ・モントリオールに代えて実施されることが発表されたそうです。日程確定を受け、生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)のAnne Larigauderie事務総長は、 科学的アプローチで自然破壊をもたらす直接・間接的な要因をつきとめ、それらの背後にある我々人類の行動を抜本的に見直すことにかかっている、と訴えました。6月、ケニア・ナイロビで開催されたワークショップでは、モントリオール会合でのGBF文書の合意に向けた交渉が行われたそうです。 

 

近年、生物多様性はまれにみるスピードで失われつつありますが、農林水産業・フードシステムはその最大の原因の一つとされています。GBFでは、農林水産業・フードシステムにおける生物多様性保全のための行動指針・数値目標も議論されているようです。他方、世界各地の農林水産業の多様性に応じて、生物多様性喪失の原因やインパクトも異なります。各地域の気候区分・水アクセス・土壌・地形などの農業生態系条件、経営規模や市場・インフラアクセス等の社会経済条件のみならず、気候変動原因への寄与や生物多様性喪失をもたらす主要原因である人間行動の動機も異なるのです。例えば、温帯地域でモノカルチャー的に展開される大規模商業農業においては、高い生産性を実現する裏で化学肥料や農薬の過剰使用による土壌・水質汚染や温室効果ガス排出が問題となっています。他方、熱帯・亜熱帯地域の小規模農業においては、高い人口増加率の下、低い土地・労働生産性による貧困が農地拡大を加速させ、生物多様性ホットスポットの直接的破壊をもたらす元凶となっているケースもあります。よって適応されるべき科学技術イノベーションの在り方も異なります。前者では、生産性を維持しながら化学肥料・農薬使用を抑制しうるイノベーションが、後者では土地・労働生産性を向上し貧困撲滅に貢献するイノベーションが、各地域において農家の厚生の向上と生物多様性保全を両立し、ひいては地球全体での持続可能な開発目標達成に貢献することが期待されます。No-One-Size-Fits-Allを意識しながら科学技術イノベーションを現場ごとに適用することが、地球規模で生物多様性保全ゴールを達成するカギになるのではないでしょうか。


(参考文献)
Crucial biodiversity summit will go ahead in Canada, not China: what scientists think: After pandemic delays, researchers say countries must agree this year on ambitious targets to protect the environment. Natasha Gilbert. NEWS. 22 June 2022
https://doi.org/10.1038/d41586-022-01723-x

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)