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466. 2022年は生物多様性アジェンダ達成の運命を握る

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466. 2022年は生物多様性アジェンダ達成の運命を握る

近年、生物多様性はまれにみるスピードで失われつつあります。1月19日Nature誌の論説では、2022年は生物多様性アジェンダが達成できるかどうか運命がかかっており、そのための研究の重要性を強調しました。

2010年に名古屋で開催された国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP10)にて採択された「愛知目標」は、2020年までに生物多様性の喪失を食い止めることを目標にしましたが、その殆どは満たされなかったと評価されています。ポスト2020年目標として、2030年までの目標を定めたグローバル生物多様性枠組み(GBF:Global Biodiversity Framework)が4月末~5月上旬に中国・昆明で開催されるCOP15第二部で議論される予定ですが、新型コロナ感染状況によっては数か月間延期されるかもしれません。

昨年7月に公表されたGBF草案は、2030年までに生物多様性の喪失を減速させ、2050年までに生物多様性が保全されることを目指しています。 この目標に向けて、2030年までに世界が取るべき行動指針として、次のようなマイルストーンを設定しています。

  • 世界の陸地および海域の少なくとも30%(生物多様性と人類にとって特に重要な地域)を、効果的かつ公平に管理し、保護区(または、その他の効果的な地域ベースの保全手段)のシステムによって保全する。
  • 侵略的外来種の侵入を50%以上削減し、その影響を排除または軽減するために、それらの種を管理または根絶する。
  • 環境中に損失する肥料の半分以上、農薬を3分の2以上削減し、プラスチックの廃棄をなくす。
  • 地球規模の気候変動緩和策として、温室効果ガスの排出量をCO2換算で年間10GtCO2e以上の削減し、すべての緩和策と適応策が生物多様性への負の影響を回避する。
  • 生物多様性に有害なインセンティブを、公正かつ公平な方法で、方向転換・再利用・改革・廃止することにより、年間5,000億ドル以上の削減をする。
  • あらゆる資金源から途上国への国際的な資金の流れを2,000億ドル増加させる。

Nature論説は、これまで生物多様性保全が失敗してきた理由をガバナンスへの対応不足と指摘しました。生物多様性ターゲットを実行に移すには、人々の組織行動や行政について理解する専門家が、生物学・環境保全専門家と手を組む必要性を強調しました。

農林水産業・フードシステムは生物多様性喪失の最大の原因とされています。昨年5月に農林水産省が発表した「みどりの食料システム戦略」では、持続可能な食料システムの構築に向け、カーボンニュートラル、生物多様性の保全・再生等の環境負荷軽減の取組を推進しています。世界を見渡せば、生物多様性の宝庫である熱帯・亜熱帯地域は、低い農業生産性と高い人口増加率が相まって、農地拡大の需要が生物多様性保全とトレードオフというジレンマを抱えている国も多くあります。こうした国々との国際協力を通じ、食料栄養安全保障を満たしつつ、持続的に生産性を向上する技術開発と普及が、地球規模で生物多様性保全ゴールを達成するカギを握っています。

(参考文献)
EDITORIAL. Biodiversity faces its make-or-break year, and research will be key Nature 601, 298 (2022)  19 January 2022  https://www.nature.com/articles/d41586-022-00110-w 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

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