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480. 地球環境と100億人の健康のための食料システム

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480. 地球環境と100億人の健康のための食料システム

今日、世界では10人に一人が飢えに苦しむ一方、世界的に動物性食品や油脂を多く含む食生活の広まりにより、高所得国だけでなく低・中所得国でも肥満や過体重などに伴う疾病が蔓延するようになっています。こうした食生活を支える食料システムは、農業多様性に欠き、生物多様性の喪失の最大の原因とされ、また人為的な温室効果ガス排出の3分の1に相当する排出を通じて気候変動にも関わっていると推計されています。

研究者らは、食料システムの問題を、食料の市場価格が健康や環境に及ぼすコストを反映していないことに起因すると指摘します。健康や環境持続性への配慮無しに生産された食品は、その安さゆえに大量に廃棄・無駄にされる一方、持続的で健康に配慮した食品は多くの人にとり手が届く値段で提供されていません。 食料システムの抱える問題を放置すれば、環境破壊だけでなく、適正な労働対価の未払いや食料安全保障や不健康問題などの社会的不正の原因となり、現在および将来世代に意図しない負の影響をもたらす恐れがあります。

2050年に向け100億人に迫る世界人口を支える上で、時間的な猶予は残されていません。近年、食料システムを見直そうという世界的な意識の高まりは、市場価格に反映されない食の健康・環境・経済的なコストを可視化することで、地球と人類の健康によい食生活への行動変容とイノベーションを促すことを目指しています。

2022年3月12日、公益財団法人農学会・日本農学アカデミー 共同主催公開シンポジウム『持続可能な食料システムに向けて』がオンライン開催されます。国際農研からは、20世紀半ば以降、食料システムが環境・人類の健康へのコストを抱えるようになった背景を、国際農業研究の展開と絡めながら歴史的に振り返り、その上で、地球環境と100億人の健康を保障する食料システム構築のためのイノベーションの役割について展望します。  

(参考文献)
Hendriks S et al. The True Cost and True Price of Food. A paper from the Scientific Group of the UN Food Systems Summit. Draft, 1 June 2021. https://sc-fss2021.org/wp-content/uploads/2021/06/UNFSS_true_cost_of_fo…

The Rockefeller Foundation. True Cost of Food Measuring What Matters to Transform the U.S. Food System. June 2021. https://www.rockefellerfoundation.org/wp-content/uploads/2021/07/True-C…;

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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