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489.トウモロコシからの地球を健康にする物質とは

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489.トウモロコシからの地球を健康にする物質とは

国際農研では、広報JIRCASという冊子を発行しています。ウェブサイト(https://www.jircas.go.jp/ja/publication/jircas)からもご覧いただけます。今回は最新号から、「地球を健康にするトウモロコシからの物質とは」抜粋し一部編集した記事を紹介します。

私たちのカラダ(皮膚、髪の毛、筋肉、爪など)はタンパク質からできています。タンパク質は「窒素」を含むアミノ酸が多数結合した構造を持ちます。私たちは、様々なタンパク質を、農家の方々が育てた作物や家畜を食べることで、体内でつくることができます。さらに、増え続ける人口を支える作物や家畜のエサ(飼料)の収穫量を増やすためには、土に「窒素肥料」をまく必要があります。煎じ詰めると、カラダは窒素肥料からできているといえます。

農地にまかれた窒素肥料の全てが作物生育に役立てばいいのですが、投与された分の約50%しか植物に吸収されません。あとの半分は農地から地下や空気など外の環境中に放出されています。土壌微生物の「硝化(しょうか)」により、アンモニアが「硝酸(しょうさん)」に変わり土壌粒子から離れてしまうのです。そして、農地から流れ出た硝酸は地下水を汚染してしまいます。さらに硝酸は二酸化炭素の310倍もの温室効果を持つ「一酸化二窒素」の形で大気に放出されてしまいます。

私たち国際農研は、作物の持つ硝化をおさえる力(BNI)に着目し、硝化をおさえる物質(BNI物質)をトウモロコシから探しています。

私たちは、トウモロコシの根8579本から、高度分析機器を用いて探索した結果、硝化をおさえる二つの物質「ゼアノンとHDMBOA」を同定しました(アイキャッチ写真)。現在、トウモロコシBNI物質が土壌中で硝化抑制を示すかについて引き続き研究を進めています。最終的には、BNI物質を多く生み出すトウモロコシを世界で栽培し、農業由来の環境問題解決に貢献し、地球を健康にして人類の幸せに繋げたいと思います。

これからも国際農研はBNI研究のようにエキサイティングな研究を発信して、多様な人々と関わりながら、皆で一丸となって頑張ります!

 

参考:
令和3年度国際農研一般公開
ヒトと肥料の繋がり、硝化について、硝化をおさえる技術が動画で理解できます。(クリックしたら始まります)

 

 

(文責:生物資源・利用領域 大髙 潤之介)

 

国際農研の圃場にて。筆者右、左は同僚でBNI研究エキスパートのスバラオ博士

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