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348. 地球の窒素循環を改善するトウモロコシ由来の物質の発見

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348. 地球の窒素循環を改善するトウモロコシ由来の物質の発見

近代農業は窒素肥料の多量投入により維持されています。その一方で、トウモロコシをはじめとする畑で育てる作物では施肥された窒素肥料の50%以上を利用できない問題が発生しています。農作物に利用されなかった窒素肥料は農地外へと流出することでムダになっています。このムダの多くは、土壌微生物による「硝化」を原因としています。

硝化とは、土壌中の硝化細菌が窒素肥料を構成するアンモニア態窒素を硝酸態窒素へと変換する反応のことです。地球の窒素循環にとって重要な過程ですが、過剰な硝化はムダな硝酸を生み出すことに繋がり、窒素循環を乱します。硝酸はマイナスの電荷を持ち、畑地作物にとって継続して利用しづらい窒素形態です。これは、プラスの電荷を持つアンモニアがマイナスの電荷を持つ硝酸に変換され、マイナスに荷電した土壌粒子と反発するため、吸着できないことに起因します。土壌粒子に吸着されず、地下へと流出した硝酸は水圏環境を汚染します。さらに、硝酸は土壌の脱窒菌によりCO2の298倍もの温室効果のある亜酸化窒素(N2O)へと変換されます。したがって、硝化を抑制する技術は作物の窒素利用効率を向上させるだけでなく、窒素肥料の損失と環境汚染を減らし地球の窒素循環を改善することに繋がります。

大髙 潤之介 肥料のムダをなくし地球を健康にしよう!

 

国際農研では、作物が根から産出する物質の持つBNI(生物的硝化抑制)を活用して、農地からの窒素損失を低減することを目指しています。このたび、研究グループはトウモロコシ根からBNI物質を探索し、1種類の新規高活性物質「ゼアノン」を含む4物質を発見しました。見出した4物質を足掛かりにして、国際農研は新たな農業システム構築を進めていきます。詳細は論文論文の紹介に関するプレスリリースをご覧ください。


参考文献
Junnosuke Otaka et al. (2021) Biological nitrification inhibition in maize — isolation and identification of hydrophobic inhibitors from root exudates, https://doi.org/10.1007/s00374-021-01577-x

一般公開用「硝化」と「生物的硝化抑制」に関する解説
https://www.youtube.com/watch?v=nUQR2pVgvWI

(文責:生物資源・利用領域 大髙潤之介)
 

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