2025年8月21日、国際稲研究所(IRRI)のYvonne Pinto所長が、齋藤和樹上級研究員とともに国際農研を訪問されました。両機関は、稲作を中心とした農業研究分野で長年にわたり緊密な連携を続けており、研究者間の共同研究や情報交換に加え、機関トップによる往来を通じて協力関係を強化してきました。
今回の訪問は、2024年4月にIRRI所長に就任されたPinto氏にとって初めての国際農研訪問です。会談では、両機関の長期的な研究協力の在り方について意見交換が行われ、日本からの貢献事例として、ASEAN地域で進められているカーボンニュートラル関連プロジェクト(2024年開始)や、「ASEAN諸国における温室効果ガス削減に向けた農業施策推進事業(AGRIプロジェクト)」(2025年開始)などが取り上げられました。研究課題に関しては、低炭素型稲作システムの開発、間断灌漑(AWD)のJCM活用、長期連用試験を活用した土壌微生物学・土壌機能研究など、両機関が協力して推進する具体的なテーマが議論されました。さらに、国際農研が実施している「グリーンアジア」の紹介を通じ、環境調和型技術を基盤とした研究協力強化の可能性についても意見交換が行われました。2025年6月には岩永勝特別顧問(国際農研 前理事長)がIRRI理事会メンバーに新たに就任したことにより、今後の両機関の連携は一層強化されることが期待されます。
訪問後半には特別セミナーが開催され、Pinto所長より「IRRI 2025–2030 Strategy: Driving Rice Innovations Toward Food Systems Transformation」と題する講演が行われました。講演ではIRRIの中長期戦略の概要や、持続可能な食料システムへの移行を支える稲作技術革新の方向性が紹介され、参加者の高い関心を集めました。