国際科学諮問委員会(第5回)開催
令和3年5月の「みどりの食料システム戦略」の策定を踏まえ、農林水産省は気候変動緩和や持続的農業の実現に資する技術のアジアモンスーン地域での実装を促進するため、令和4年度から「みどりの食料システム基盤農業技術のアジアモンスーン地域応用促進事業」を開始し、国際農研が同事業を「グリーンアジア(プロジェクトの略称)」として実施しています。
令和6年10月3日、第5回目となる国際科学諮問委員会を奈良県コンベンションセンター(奈良市)で開催しました。冒頭、小山理事長及び信夫農林水産省農林水産技術会議事務局研究総務官(当時)から開会挨拶がありました。信夫総務官からは、ASEAN事務局による諮問委員会への今回のオブザーバー参加を歓迎するとともに、技術の普及に向けたこれまでの諮問委員からの尽力への感謝と今後の期待が述べられました。ASEAN事務局及びERIAからは、特に科学及びイノベーションの観点を中心に食料と農業分野におけるASEANの優先事項に関する情報共有がなされ、また、農林水産省からは、「みどり戦略」の実施状況や「日ASEANみどり協力プラン」についての説明がなされました。
諮問委員会事務局(国際農研)からは、本プロジェクトの下で策定された「アジアモンスーン地域の生産力向上と持続性の両立に資する技術カタログ」について、国連食料システムコーディネーションハブ(注:2021年に開催された国連食料システムサミットのフォローアップ機関)及びASEAN事務局のウェブサイトにおいて紹介されていることに加え、国連食料農業機関(FAO)のウェブサイトに新たに掲載され、国際機関との連携が更に進んでいることを紹介しました。その上で、同事務局からは技術カタログVer.3のドラフトを紹介し、間もなく公開しうることを説明するとともに、グリーンアジアの下で実施している国際共同研究である間断かんがい技術、生物的硝化抑制(BNI)強化コムギ、及びイネいもち病抑制のための国際判別システムの活用に関する実証試験の進捗も報告しました。また、同事務局からは、技術カタログ掲載技術のうち、ASEAN諸国からの要望が多く寄せられている技術を中心に、実装促進に向けた方策について諮問委員に意見を求めました。
上記の内容に関し、諮問委員からは、グリーンアジア、特に技術カタログの進展を高く評価するとした上で、
・技術の普及に向け、社会、地域、市場、経済性等の側面に留意すべきであり、必要なマッチングを行うべき
・技術の普及に関する障壁の克服のため、ファイナンス機関との連携の観点からもIRRIをはじめとしたCGIARの諸機関との緊密な連携を行ってはどうか
・技術普及の障壁への対処には、社会科学的なアプローチが必要
・Scalableな技術の普及は供給主導型(supply-driven)なアプローチであることから、需要に基づいた(demand based)アプローチとの結合を検討することが重要
といった、グリーンアジアの活動の今後の方向性に資するコメントのほか、
・カシューナッツ殻液供与による肉牛からのメタン排出量削減技術については、関心国の畜産部局との技術導入の可能性の協議のほか、仮に既存の技術がある等の理由により行政部局の関心が薄い場合であっても研究部局との共同研究やケーススタディ等によって技術を普及しうるのではないか
といった具体的な示唆や、様々な提案、助言、コメント等をいただきました。
また、最後にASEAN事務局からは、グリーンアジアは日ASEANみどり協力プランを支援するものであり、国際農研及び諮問委のメンバーとともに今後のASEANの優先事項に関し、ともに活動していけることを期待する旨の発言をいただきました。