熱帯・島嶼研究拠点の寳川拓生研究員が令和7年度 第18回沖縄農業研究会賞を受賞

関連プログラム
情報
関連プロジェクト
熱帯作物資源
国名
日本
熱帯・島嶼研究拠点の寳川拓生研究員が、研究成果「サトウキビ遺伝資源を用いた形質評価技術開発および既存品種の有効活用に関する研究」により、令和7年度 第18回沖縄農業研究会賞を受賞しました。表彰式は、令和7年8月15日に琉球大学農学部で開催された第63回沖縄農業研究会年次大会において行われました。 
 

熱帯・島嶼研究拠点の寳川拓生研究員が、研究成果「サトウキビ遺伝資源を用いた形質評価技術開発および既存品種の有効活用に関する研究」により、令和7年度 第18回沖縄農業研究会賞を受賞しました。表彰式は、令和7年8月15日に琉球大学農学部で開催された第63回沖縄農業研究会年次大会において行われました。 

サトウキビは、栽培期間が長く環境の影響を受けやすい一方、遺伝的にも複雑であることから、理想的な品種の育成には技術的な課題が多く存在し、その生産性の改良は他作物に比べて大きく遅れてきました。気候変動を見据えた品種育成を進めるためには、従来の手法にとらわれない研究開発が求められています。

作物の品種育成に関する研究は、(1) 遺伝資源の収集から評価、品種選抜に有用な形質探索を行う「プレ育種」、(2) 交配から10年以上にわたり選抜を繰り返す「選抜育種」、(3) 品種登録後の普及や既存品種の有効活用、新たな需要把握を行う「ポスト育種」と、時系列的に3段階に大別できます。

寳川研究員は、このうち、「プレ育種」と「ポスト育種」に取り組んできました。具体的には、近縁遺伝資源の有用特性をサトウキビに導入する種間交配により、狭くなった遺伝的基盤を拡充するための遺伝資源情報整備、また既存品種を活用するための栽培技術開発などを実施してきました。特に、サトウキビの近縁遺伝資源の一つであるエリアンサスが示す不良環境耐性の生理生態学的メカニズムを部分的に解明し、これを利用した属間交配によるサトウキビ改良の可能性を示した点は大きな成果です。

こうした研究業績が評価され、今回の受賞につながりました。沖縄農業研究会は、1962年に琉球大学農学部と沖縄県農業試験場の情報交流の場として設立された伝統と歴史のある研究会で、毎年8月に研究発表会を開催し、研究会誌「沖縄農業」を刊行するなど、県内の農業研究の発展に大きく寄与しています。

今回の成果は、現時点で沖縄農業や農家に直接的な利益をもたらす成果ではありませんが、サトウキビの複雑な遺伝的背景や環境影響を克服する新たな育種手法の可能性を拓くものであり、将来的に沖縄のサトウキビ生産の持続的発展に貢献することが期待されています。
 

写真左が寳川研究員

写真左が寳川研究員

関連するページ