辻本泰弘プロジェクトリーダーらの発表が第10回アジア作物学会議の優秀発表賞を受賞

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令和3年9月8~10日にオンラインで開催された第10回アジア作物学会議において、生産環境・畜産領域の辻本泰弘プロジェクトリーダーらが、研究成果「農家の栽培管理法—移植日と栽植密度—の違いがイネ収量に対する窒素およびリンの効果に影響する」で、優秀発表賞を受賞しました。

 令和3年9月8~10日にオンラインで開催された第10回アジア作物学会議(10th Asian Crop Science Association Conference)において、アンタナナリボ大学放射線研究所(Laboratory of Radioisotopes, University of Antananarivo)の博士課程学生ブルース・ハジャ・アンドリアナリ氏、生産環境・畜産領域の辻本泰弘プロジェクトリーダーらの、水稲栽培におけるリンの施肥効果と気象環境との相互作用に関する成果発表が、優秀発表賞 (Presentation Award)を受賞しました。発表タイトルは、「The effect of N and P applications on rice yield can be changed by farmers’ management practices—transplanting dates and densities—(農家の栽培管理法—移植日と栽植密度—の違いがイネ収量に対する窒素およびリンの効果に影響する)」です。

 受賞対象となったアンドリアナリ氏らの研究成果は、土壌のリン欠乏と雨季終りの気温低下が顕著なマダガスカルの農家水田において、2年間の栽培実験を繰り返し、リンを施用することによって、施用しない場合に比べて、イネの出穂日が6~24日間早くなることを明らかにし、その結果、リン施肥の効果は、移植が遅く生育後半に気温低下が生じる条件でより大きくなることを実証しました。

 リン欠乏が、イネをはじめ植物の発育を遅延させることはよく知られていますが、その影響が生育期間中の気象条件の変化を介して、作物の生産性に及ぼす効果については、これまで示されていませんでした。本研究で得られた成果は、環境負荷や資源の枯渇が懸念されるリン肥料をより有効に活用し、リンの施肥効率およびイネ収量改善に繋がる可能性が期待できます。

 また、今年5月12日に、農林水産省は、食料や農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」を策定し、その中で、化学肥料の低減も目指しています。本成果は、この戦略の国際展開にも貢献するものと考えます。

 なお、本成果の一部は、2021年9月に国際誌Field Crops Researchに公表されました。
 

https://doi.org/10.1016/j.fcr.2021.108256

図1.本研究では、マダガスカルの農家圃場で、移植日、栽植密度、施肥法を改変して、イネの生産性に及ぼす効果を繰り返し検証しました。

図2.アンドリアナリ氏(右から3人目)は、本研究で得られた成果を含めて学位論文を取りまとめ、アンタナナリボ大学から博士号を授与されました(辻本泰弘プロジェクトリーダーは右から2人目)。

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