鳥山和伸博士(元生産環境・畜産領域)が日本土壌肥料学会論文賞を受賞

関連プログラム
食料
国名
日本

元生産環境・畜産領域の鳥山和伸博士らの論文「Contribution of fallow weed incorporation to nitrogen supplying capacity of paddy soil under organic farming」に対し、このたび、2020年度日本土壌肥料学会論文賞が贈られました。

鳥山和伸博士(元生産環境・畜産領域)が、2020年度日本土壌肥料学会論文賞(SSPN Award)を受賞し、2021年9月15日に日本土壌肥料学会2021年次大会(オンライン)の授賞式で賞状を授与されました。

 受賞論文は、科研費基盤(B)「有機無農薬水稲栽培年数の経過に伴って土壌・ 水稲・雑草・微生物はどう変化するか?」(代表者:東京大学・小林和彦教授 2014-2017)で実施した研究に基づくもので、論文名は Contribution of fallow weed incorporation to nitrogen supplying capacity of paddy soil under organic farmingです。

 論文では、「有機稲作における休閑期雑草のすき込みは水稲への土壌窒素供給力を高める」という現象について、雑草を重窒素で標識し、土壌すき込み後における窒素の挙動を追跡しました。栃木県の有機栽培農家が、休閑期にイネ科雑草(スズメノテッポウ主体)のすき込みを20年近く行い、平均籾単収440kg/10aレベルを維持している要因を調べ、休閑期雑草に着目した栽培技術の優れた点を明らかにしました。

 具体的には、数年以上継続した雑草すき込みにより、水稲吸収窒素の17%が雑草由来となり、雑草由来窒素による土壌窒素供給力の増加と維持によって持続的なコメ生産が可能であること、一方、すき込みを中断すると2年目以降に収量は有意に低下することを栽培試験で示しました。従来、有機稲作では、レンゲ等のマメ科緑肥が空中窒素固定の面から注目されていましたが、窒素供給過多になり易く、その制御が課題でした。本研究で対象とした休閑期のイネ科雑草すき込みは、春先の休閑期に無機化した窒素のうち3-4kg/10aを雑草体内に吸収し、その全量が土壌に戻るので、無機化量過多にならず、安定したイネ栽培と同時に環境中への窒素流亡の抑制効果も期待できる技術です。

 ちなみに、農林水産省は、2021年5月、持続可能な食料システムの構築に向け、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」を策定しました。その中で、2050年までに目指す姿の一つとして「耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%(100万ha)に拡大」を挙げています。

 有機農業の水田土壌における休耕雑草の窒素供給への寄与を明らかにした本成果は、学術的に高い評価を受けただけでなく、国内あるいは海外においても、有機農業の推進を通じて、持続可能な食料システムの構築に貢献するものです。

Toriyama K, Amino T, and Kobayashi K (2020) Contribution of fallow weed incorporation to nitrogen supplying capacity of paddy soil under organic farming. Soil Science and Plant Nutrition, 66: 133-143.

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