第30回日本土壌肥料学会奨励賞(2012年度)の受賞

関連プログラム
食料安定生産

生物資源・利用領域の小原実広研究員が、第30回日本土壌肥料学会奨励賞(2012年度)を受賞しました。今回の受賞は、(1)植物栄養学分野の研究に遺伝学的手法を導入して体内での窒素の再利用を担っている酵素群の量を支配している遺伝子座を同定したこと、(2)水耕栽培による幼苗期の根の長さを評価することで窒素の反応を簡便に評価できる方法を確立するとともに、(3)その方法を用いて根の長さ、窒素の吸収ならびに収量を増加させる遺伝子をインド型の在来品種から単離したことが評価されたものです。

生物資源・利用領域の小原実広研究員が、第30回日本土壌肥料学会奨励賞(2012年度)を受賞しました。受賞内容は次のとおりです。

受賞研究業績名: イネの窒素利用機能に関する研究 
生物資源・利用領域 研究員 小原 実広

受賞の内容:

  2050年には世界人口が91億人に達することが予想されており、この人口を養うためには、現在の食料生産量を約70%程度増加させる必要があると見込まれています。イネの栽培面積あたりの収量を増加させるためには、窒素の利用機能を向上させることが重要になってきます。今回の受賞は、(1)植物栄養学分野の研究に遺伝学的手法を導入して体内での窒素の再利用を担っている酵素群の量を支配している遺伝子座を同定したこと、(2)水耕栽培による幼苗期の根の長さを評価することで窒素の反応を簡便に評価できる方法を確立するとともに、(3)その方法を用いて根の長さ、窒素の吸収ならびに収量を増加させる遺伝子をインド型の在来品種から単離したことが評価されたものです。

今後の展開:

 JIRCAS食料安定生産プログラムのイネ創生プロジェクト、アフリカ稲作振興プロジェクトの研究において、アジア、アフリカ地域の主要品種が、インド型の在来品種に比較して、根の長さが短いことを明らかにしました。それらの主要品種群の根を改良した系統を開発するために、現在、本研究で同定した遺伝子をアジア、アフリカ地域の主要品種に交配法で導入しています。

 

xxx

図 幼苗期の簡易な評価法による根の長さの変異

 この評価方法を確立したことで、安定かつ正確に根の長さを評価することできるようになりました。そして、根が長く、かつ窒素の吸収ならびに収量を増加させる品種の選抜に成功しました。さらに、関連する遺伝子の単離が可能になりました。
 左はコシヒカリ、中央は根を長くする遺伝子をコシヒカリの遺伝的背景に導入した準同質遺伝子系統、右は遺伝子の供与親であるインド型の在来品種。イネは250μM NH4+を与え16日間栽培。

関連発表文献

  • Obara et al. 2000. Physiol. Plant., 108, 11-18.
  • Obara et al. 2001. J. Exp. Bot., 52, 1-9.
  • Obara et al. 2004. Theor. Appl. Genet., 110, 1-11.
  • Obara et al. 2010. Theor. Appl. Genet., 121, 535-547.
  • Obara et al. 2011. Soil Sci. Plant Nutr., 57, 80-92.

関連するページ