2011年若手外国人農林水産研究者表彰報告

平成23年11月14日、つくば国際会議場において若手外国人農林水産研究者表彰(農林水産技術会議事務局主催)の表彰式典が挙行されました。式典には、受賞者母国大使館や選考を務められた委員を含め、多数が参加され盛大に行われました。   本賞は、開発途上地域のための農林水産業及び関連産業に関する研究開発に優れた功績をあげつつある若手外国人研究者を農林水産技術会議会長が表彰するもので、今回が第5回目です。

平成23年11月14日、つくば国際会議場において若手外国人農林水産研究者表彰(農林水産技術会議事務局主催)の表彰式典が挙行されました。式典には、受賞者母国大使館や選考を務められた委員を含め、多数が参加され盛大に行われました。
本賞は、開発途上地域のための農林水産業及び関連産業に関する研究開発に優れた功績をあげつつある若手外国人研究者を農林水産技術会議会長が表彰するもので、今回が第5回目です。受賞者と業績名は、次の通りです。

受賞者と業績名(敬称略)

Dr. Roel Rodriguez SURALTA
ロエル ロドリゲス スラルタ
国籍:フィリピン共和国
所属:フィリピン稲研究所

業績:変動する土壌水分ストレスの下でイネの乾物生産量を維持するための根の可塑性の重要性

 

Dr. Roel Rodriguez SURALTA

[業績概要]
アジア、アフリカの開発途上国でのコメ生産の多くは天水田に依存している。気候変動の影響により、これらの地域における降雨は不安定になってきており、その中で安定した生産を確保することが求められている。さらに、灌漑水田においても、水需給が逼迫してきており、節水裁判など、新たな栽培手法が試みられている。受賞者は、天水田や、節水栽培圃場にみられる乾燥と湛水が繰り返され、土壌水分が変動する条件において、根系が発揮する可塑性が、重要な役割を果たしていることを解明し、乾燥ストレス後の再湛水により、根系発育が盛んになる形質の連鎖解析を行い、形質に関連する遺伝子座を特定した。今後、特定された遺伝子を活用した既存品種の解析や、育種を通じ、開発途上国に多い天水田や節水栽培条件でのコメ生産に寄与することが期待される。

Dr. Muhammad Abdul ALIM
モハマド アブドール アリム
国籍:バングラデシュ人民共和国
所属:バングラデシュ農業大学

業績:ダニ及びダニのもたらす病害に関する斬新な抑制戦略の開発を目指したダニ分子生物学の研究

 

Dr. Muhammad Abdul ALIM

[業績概要]
家畜に外部寄生するマダニは、バベシアなどの原虫をはじめ、ウイルス、リケッチア、細菌などによる様々な疾病を媒介し、熱帯、亜熱帯地域の畜産業に大きな被害をもたらしている。また、気候変動を背景に被害地域が拡大するとの予測もある。殺ダニ剤による駆除技術から、マダニの生理生態に立脚した効果的な抗ダニ薬の開発への戦略を構築する上で、分子生物学的な吸血機構の解明は重要である。受賞者は、マダニの唾液に含まれる吸血調節物質として、ヘマンギンと呼ばれる蛋白質を同定し、さらに、本蛋白質が血管形成、細胞増殖、分化調節の機能を持つことを明らかにした。今後、吸血調節物質を逆手にとったマダニ駆除技術の開発や、本蛋白質をベースとした血液・循環器薬などへの利用が期待される。

Dr. Jonne RODENBURG
ヨネ ローデンブルフ
国籍:オランダ王国
所属:アフリカ稲センター

業績:資源の乏しい稲作農家のための社会的に実現可能な雑草管理戦略

 

Dr. Jonne RODENBURG

[業績概要]
根寄生雑草は、種子の状態で圃場に長期に渡り生存し、汚染地で作物生産が行われると、根に寄生し、壊滅的な被害を与える。現在、アフリカ、サブサハラ地域における乾燥条件で栽培される穀物作物生産の生物学的な最大の脅威になっている。また、アフリカ天水田においても、イネに寄生し、農家の脅威になっている。受賞者は、一貫して、アフリカにおいて活動し、根寄生雑草について、駆除をせずとも競合可能な抵抗性品種の選抜等、現地農村、農家に受入可能な技術を組み合わせ、農民参加型手法を駆使することにより、総合的な雑草管理手法を確立した。今後、農民参加型手法に基づき、普及を見据えた研究を行っていることから、アフリカでの普及が期待される。

受賞者、審査員及び関係者

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