2020年9月18日、国際イネいもち病ワークショップ「アジアにおけるイネいもち病の適用可能な解決策」が、国際農研(JIRCAS)と台湾のアジア太平洋食糧肥料技術センター(FFTC)との共同主催で開催されました。コロナ禍の影響で、国際農研をメイン会場としたオンライン会議でした。アジア各国のいもち病害発生状況や研究成果、国際農研が2006年より実施してきたイネいもち病ネットワーク研究の成果、さらにはそれらの研究成果や遺伝資源を用いた今後の研究の方向性について論議されました。

このワークショップは国際農研として最初の大規模なオンラインによる国際会議で、18ヵ国・地域から100名のオンライン参加と16名のオンサイト参加がありました。開会セレモニーでは、主催者を代表して国際農研の岩永勝理事長とFFTCのSu-San Chang所長がイネいもち病研究の重要性と本ワークショップの意義を述べました。農林水産技術会議事務局の本城浩国際研究官は越境性病害虫に関する共同研究の重要性を述べられ、本ワークショップに対する期待の挨拶をいただきました。

国際農研の福田主研による基調講演では、国際いもち病ネットワーク研究の概要とその成果、将来の研究に利用できる遺伝資源が紹介されました。いもち病菌菌系の病原性やイネ品種の抵抗性を解明できる判別システムの重要性、遺伝的多様性を利用した高病原性いもち病菌レースの解消、圃場抵抗性遺伝子を導入した育種素材および多系(マルチライン)品種の利用が、農家のニーズに即した防除技術の開発につながり、今後のいもち病研究として重要であることが示されました。

その後、3つのセッションに分かれた発表と論議が行われました。第1セッションでは、判別システム開発の重要性と病原性評価法と菌レース命名法(農研機構)や抵抗性遺伝子を一つずつ持つ判別品種群の開発研究(国際農研)、圃場抵抗性遺伝子を用いた品種改良の取り組み(愛知県総農試)が紹介されました。遺伝的背景に余分な抵抗性遺伝子を含まない判別品種群や、病原性の広く安定した標準判別いもち病菌菌系が判別システムに求められること、圃場抵抗性遺伝子の導入が有効な防除手段の一つになるであるとの見解が示されました。

第2セッションでは、FFTCメンバー国のマレーシア、韓国、タイ、および台湾からカントリーレポートが行われ、いもち病害の現状と菌レースの変異などについて報告されました。国際稲研究所(IRRI)と国際農研とが共同開発した判別品種群の利用の大切さが再確認されるとともに、病原性遺伝子の解析から、抵抗性遺伝子Pi9(t)に感染できる菌系が少ないことが、タイ、台湾の研究成果として示されました。

第3セッションでは、国際農研のネットワーク参加国からの発表が行われ、各地域のいもち病レースとイネ品種の抵抗性変異およびそれらの関係、さらには圃場抵抗性遺伝子を用いた育種素材開発の現状が紹介されました。論議においては、Pik座の複対立遺伝子群の病原性菌菌系の発生のリスクの高さが確認されました。一方、Piz座の複対立遺伝子群、とくにPi9(t)に対する病原性菌系の発生の少なさが確認されましたが、インドやバングラデシュではすでに病原性菌系の発生の情報が提供されました。また標準素材移転契約(SMTA)等で圃場抵抗性遺伝子導入育種素材が交換されていること、商用の利益分配も考慮して今後の共同研究が展開されることが確認されました。

最後にFFTCの長谷部副所長から、ワークショップ全体のまとめ、継続的な研究の推進の重要性が示され、発表内容の公開と本の出版等の今後の計画が示されて、ワークショップは閉会しました。

開会の挨拶:岩永勝 国際農研理事長

開会の挨拶:Su-San Chang FFTC所長(右)

来賓の挨拶:本城浩 農林水産技術会議事務局国際研究官

オンサイト会場(国際農研の会場)の様子