[アフリカ稲作振興] アフリカにおけるコメ生産向上のための技術開発

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食料安定生産

2021-03-09

アフリカでは、経済発展の遅れや高い人口増加率により貧困や食料不足が発生しています。コメ生産量の増加は、コメ消費量の急激な増加に追いついておらず、アジア・北米等からの輸入量が年々拡大しています。また、未だに農家のコメ作りの経験や知識は十分ではなく、農家の営農活動を支える研究・普及体制も同様で、コメの生産技術の進歩やコメ生産量の増加に貢献できていません。他方、我が国が主導するアフリカ開発会議(TICAD IV)の横浜宣言(平成20年)では、「今後10年間でアフリカの米生産を倍増させる」目標が示され、この実現のため「アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)」が設立されました。JIRCASは当初から運営委員会メンバーとして参加しています。
 本プロジェクトは、3つの課題から構成され、それぞれ以下の研究を行います。

  1. 安定生産可能でアフリカ向けの有望な水稲・陸稲遺伝資源の評価・改良等により新しいイネ品種を開発し、いもち病やリン酸肥料不足等によるコメ生産量の損失軽減と増収を図れることを示します。アフリカのいもち病菌系レースの多様性やイネ遺伝資源における抵抗性変異を評価します。また、リン酸肥料欠乏耐性についてもアフリカのイネ遺伝資源がどの程度の耐性を有するのか評価します。それらの知見から新しい素材を開発し、その素材はアフリカの圃場で評価されます。
     
  2. ライフサイクルコストが低廉な水田基盤整備の技術を開発するとともに、アフリカの条件に適したアジア型水田基盤整備および水稲栽培モデルを開発し、普通の農家でも畦で区画し用水を蓄える「アジア型水田」が比較的容易に整備でき、水稲栽培が行えるようにします(図1, 図2)。

図1:牛を用いた代掻き・均平(エチオピア)

図2:耕耘機を用いた代掻き・均平(ガーナ)

  1. これまで稲作に未利用だった氾濫(はんらん)低湿地においては、河川流域の稲作に効果的な生産技術を開発し、稲作可能地域の面的拡大を図ります。過去2年間の予備的調査結果からは、低湿地の水源に近いほど土壌肥沃度が高く、雨季に一定の湛水期間が得られることから、水稲作の導入が可能であることがわかりました。本課題においては、社会科学から自然科学にわたる一連の研究により、氾濫低湿地における稲作導入適地評価モデルおよび作物安定生産技術の開発をすすめ、アフリカ版の低投入稲作技術体系を提案します(図3)。

図3:氾濫低湿地のイネ(雨期には約1mの水深)

また、JIRCASによる研究成果が、関係国政府・国際機関による調査・研究および普及の推進等に確実に活用されるよう、共同研究あるいは協力の体制の構築を進めています。アフリカにおけるコメの倍増を目指すCARD の目標が達成されることが、本プロジェクトの目標です。

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