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1399.プラネタリーヘルスへの投資の社会経済的効果

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1399.プラネタリーヘルスへの投資の社会経済的効果

 

気候変動、生物多様性の喪失、土地の劣化、砂漠化、そして汚染と廃棄物は、地球・人々・そして経済に甚大な被害をもたらしています。

2025年12月9日、ナイロビで開催された第7回国連環境総会にて公表された報告書(The Global Environment Outlook, Seventh Edition: A Future We Choose (GEO-7))は、気候の安定化、自然と土地の保全、そして汚染問題の解決をはじめとするプラネタリーヘルスへの投資が、世界のGDPを数兆ドル増加させ、数百万人の命を救い、数億人の人々を貧困と飢餓から救う可能性を示しました。

報告書は、物質消費への依存を減らす行動変容と、技術開発と効率性の向上、という2つの変革の道筋を示し、気候リスクへのエクスポージャーの低減・生物多様性喪失の減少・天然林の増加によるマクロ経済的便益が2050年に現れ始め、2070年までに年間20兆米ドルに、その後は年間100兆米ドルに急増すると予測しています。また、大気汚染の削減などの対策により2050年までに900万人の早死を回避でき、2050年までに約2億人が栄養不足から脱却し1億人以上が極度の貧困から脱却できる可能性があります。

一方、2050年までにネットゼロエミッションを達成し、生物多様性の保全と回復のための十分な資金を確保するには、2050年まで年間約8兆米ドルの投資が必要です。しかし、何も対策を取らない場合のコストははるかに高くなります。

 

報告書は、変革のために、5つの主要分野における抜本的な変化の必要性を示しています。

経済と金融:GDPにとどまらない包括的な富の指標への移行、外部経済性の内部化、自然に悪影響を与える補助金・税金・インセンティブの段階的廃止と資金の適正な再利用

原材料と廃棄物:循環型プロダクトの設計、原材料の透明性とトレーサビリティの確保、循環型・再生型ビジネスモデルへの投資転換、意識改革を通じた消費パターンの循環型への転換

エネルギー:エネルギー供給の脱炭素化、エネルギー効率の向上、重要な鉱物バリューチェーンにおける社会的・環境的持続可能性の確保、エネルギーアクセスとエネルギー貧困への対処

食料システム:健康的で持続可能な食生活への移行、循環性と生産効率の向上、食品ロスと廃棄の削減

環境:生物多様性と生態系の保全と回復の加速、自然に基づく解決策活用、気候変動への適応とレジリエンス(回復力)、気候変動緩和戦略

 

報告書は、政府、非政府組織、多国間組織、民間セクター、市民社会、学術界、専門組織、一般市民、そして先住民族に対し、地球規模の環境危機の緊急性を認識し、ここ数十年で達成された進歩を基盤として、すべての人々にとってより良い未来を実現するための統合的な政策、戦略、行動の共同設計と実施において協力するよう呼びかけています。


(参考文献)
UNEP (2025). Global Environment Outlook 7: A future we choose – Why investing in Earth now can lead to a trillion-dollar benefit for all. https://www.unep.org/resources/global-environment-outlook-7


(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

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