Pick Up
1245. 自然移行経済に向けた投資
1245. 自然移行経済に向けた投資
国連環境計画(UNEP)の新たな報告書は、世界が自然保護に投資する1米ドルごとに30米ドルが自然破壊に費やされているとし、この著しい不均衡を正すために、自然に基づく解決策(NbS)への世界的な資金調達の抜本的な転換を呼びかけました。
報告書によると、2023年時点において、
自然に悪影響を与える資金フロー総額は7.3兆米ドルであり、民間資金による4.9兆米ドルは、公益事業、工業、エネルギー、基礎素材といった少数のセクターに集中しています。化石燃料、農業、水、運輸、建設への環境に有害な公的補助金は、2023年には2.4兆米ドルに達します。
NbS資金フローは2,200億米ドルで、その90%近くが公的資金によるものであり、NbSに対する国内外の支援が着実に増加していることを反映しています。NbSへの民間投資はわずか234億米ドルで、NbS投資総額の10%に過ぎません。自然への依存、リスク、そして機会に対する意識が高まっているにもかかわらず、企業や金融機関はNbSへの大規模な投資をまだ行えていません。
NbS投資は、2030年までに年間2.5倍の5,710億米ドルにまで拡大する必要があります。これは、世界のGDP(2024年時点)のわずか0.5%に相当します。
自然に基づく解決策への資金提供は徐々に進む一方で、有害な投資や補助金は急増しています。報告書は、この現状を転換するために、民間および公的資本の流れを改革し、政策立案者や企業が改革を段階的に進め、経済のあらゆるセクターにわたって高水準のNbSを拡大するのに役立つように設計された枠組み(自然移行Xカーブ:Nature Transition X-Curve)を提案します。この枠組みは、有害な補助金と、既存の破壊的な投資を段階的に廃止する道筋を示しつつ、同時にNbS投資とネイチャーポジティブな投資を拡大していくもので、サプライチェーン全体にわたる公共部門および民間部門の企業に具体的な選択肢を提供します。
報告書はまた、「1兆ドル規模の自然移行経済」という課題に取り組むためのロードマップも提供しています。報告書では、世界中の政府やビジネスリーダーが既にこの取り組みをどのように実践しているかを事例を挙げて紹介しています。ヒートアイランド現象に対し、市民の住みやすさを向上させるために都市部を緑化すること、道路やエネルギーインフラに自然を組み込むこと、二酸化炭素を利用した排出ガスマイナスの建築資材を生産することなどです。
報告書は、自然ポジティブな投資における重要な原則として、地域の生態学的、文化的、社会的文脈に根ざしつつ、包摂性と公平性を確保することを掲げています。
(参考文献)
State of finance for nature 2026: Nature in the red - Powering the trillion dollar nature transition economy: Summary for decision makers. https://www.unep.org/resources/state-finance-nature-2026
(文責:情報プログラム 飯山みゆき)