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625. 食料システム移行の課題

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625. 食料システム移行の課題

9月21日、FAO、IMF、世界銀行、WFP、WTOといった国際機関のトップらが、世界食料安全保障危機に対し、7月に続く 2度目の共同声明を発表し、効率的な生産・貿易支援、透明性の向上、イノベーションの加速、食料システム転換のための投資、に向けた包括的な国際協調を呼びかけました。

過去50年間にわたり、世界の食料システムは大きく変容を遂げ、その過程で食生活・栄養・健康・生活・環境持続性へのインパクトを伴ってきました。地球・人類の健康に資するべく食料システムを転換する上で、まずはその現状把握が必要ですが、世界各国の生産・流通・消費段階に応じ、食料栄養事情・環境問題等の課題は極めて多様です。今月Nature Food誌で公表された論文は、世界の国々を食料システムの移行段階に応じて分類(food system typologies)し、課題の視える化を試みました。

20世紀半ば以来、食料システムは、人口増に伴う食料を供給することで破滅的な飢饉の確率を大幅に減少させてきた一方、気候変動・エコシステム強靭性の課題・格差といった新たな挑戦をもたらしています。一方で、全ての人々に栄養ある食の提供を可能にするには至っていません。食料システムの課題は、世界人口を養うための栄養ある食品を供給するにとどまらず、環境持続的でかつ公平・公正を推進し、文化的価値を尊重する方向性、にシフトしてきました。

論文は、 世界人口の97%に相当する155か国を、(1)農村・伝統的(rural and traditional)、 (2)インフォーマル・拡大傾向(informal and expanding)、 (3)新興・多様化(emerging and diversifying)、 (4) 近代化・フォーマル化(modernizing and formalizing)、 (5)産業化・統合化( industrial and consolidated)、の5類型に分類しました。論文は、食料システムは、経済発展に伴い、栄養ある食の入手可能性を高めてきたものの、全ての食料システム類型において、最適な栄養・健康、環境持続性、包括性と公平性、を満たすアウトカムをもたらすには至っていないと結論付けています。

論文はさらに、こうした分類からの「外れ値 ‘outlier’」をとる6か国  (タジキスタン、エジプト、アルバニア、エクアドル、ボリビア、アメリカ)についての事例研究を通じて、土地制度や特殊な社会経済事情の重要性を示しました。例えば、(1)農村・伝統的、でありながら、公平的な土地制度改革・換金作物から野菜果物栽培推奨政策によって人口の多くが健康な食生活へのアクセスを持つタジキスタンのケース、(5)で健康な食生活は経済的に入手可能でありながら、社会格差ゆえに浸透しておらず、同時に農業従事者の多くが移民で貧困・不健康な食生活を送るアメリカ、のケースが言及されました。

(参考文献)
Ambikapathi, R., Schneider, K.R., Davis, B. et al. Global food systems transitions have enabled affordable diets but had less favourable outcomes for nutrition, environmental health, inclusion and equity. Nat Food 3, 764–779 (2022). https://doi.org/10.1038/s43016-022-00588-7

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)