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568. 国際熱帯デー:“熱研”の遺伝資源と島嶼環境を活用した取り組み

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568. 国際熱帯デー:“熱研”の遺伝資源と島嶼環境を活用した取り組み

6月29日は国連で制定された国際熱帯デー(International Day of the Tropics)です。熱帯地域は、世界の総表面積の40%を占め、世界の生物多様性の約80%と、多様な言語・文化の大部分を占めています。熱帯地域は近年、大きな経済発展を遂げていますが、それに伴う人口増や都市化に気候変動も加わり、自然環境・生態系の悪化や生物多様性の急激な減少等の課題に直面しています。熱帯地域の豊かな自然環境と多様な生物資源は、地球の共通の財産として守っていく必要があります。

国際農研の支所である熱帯・島嶼研究拠点は、沖縄県の中でも台湾に近い亜熱帯環境に位置しています。石垣島の市民の皆様からは“熱研”の愛称で親しまれています。熱研は、国際農研が設立された1970年に石垣島に設置されました。石垣島に熱研が設置された最大の理由は、国際農研が海外で実施する研究現場に類似した気候・環境条件にある事です。熱研内には防風林で囲まれた21haの試験圃場と各種温室があり、これらの圃場や温室で、熱帯・亜熱帯環境下の農業・環境に関する試験研究を実施しています。

昨年度から始まった第5期中長期計画(2021~2025年度)では、熱研が国内外へ発信する研究活動として、熱帯作物資源プロジェクトと熱帯島嶼環境保全プロジェクトを実施しています。

熱帯作物資源プロジェクトでは、熱研内で保存している多様な熱帯性作物遺伝資源の利用の高度化を目的として、国内および東南アジアを主な対象に、遺伝資源情報の整備・共有化、特性評価技術の開発や機能解析、遺伝資源を活用した新育種素材開発等を行っています。これまでの取り組みとして「JIRCASマンゴー遺伝資源サイト」を開設し、熱研が保存しているマンゴー遺伝資源の特性の概要を掲載しています。今後、エリアンサス(バイオマス資源作物)やインド型イネの情報も整備・公開していく予定です。また近年、国内で問題となっているパッションフルーツのウイルス病への対応策として開発した「簡易茎頂接ぎ木法によるウイルスフリー化技術」の紹介動画を国際農研公式YouTube内で配信しています。

熱帯島嶼環境保全プロジェクトでは、熱帯・亜熱帯地域の島嶼において、多様で豊かな生態系を維持しつつ、農業を中心に人間の生業を持続的に営むことができる仕組みを、石垣島をモデルケースとして作りその成果を沖縄県やフィリピン等他のアジア・太平洋島嶼へ展開していく事を目指しています。現在、熱帯・島嶼研究拠点では、製糖残渣を活用した資源循環技術の開発、新たな地下灌漑システムの設置とその節水効果などの有用性の研究、マングローブ林生態系における生態調査、河川における水質調査などを行っています。

このような取り組みの一環として2022年3月18日に、「熱帯島嶼における農業生産と環境保全の両立」と題し、フィリピン、沖縄、石垣をオンラインで繋いだ国際会合を開催しました。  

JIRCASマンゴー遺伝資源サイトはこちら
https://www.jircas.go.jp/ja/database/mango-top

簡易茎頂接ぎ木法によるパッションフルーツのウイルスフリー化技術の動画リンク先はこちら
https://www.youtube.com/watch?v=sQ26IFv2Sl0

国際会合「熱帯島嶼における農業生産と環境保全の両立」開催報告へのリンクはこちら
https://www.jircas.go.jp/ja/reports/2021/r20220318


(文責:熱帯・島嶼研究拠点 大前英、山中愼介、安西俊彦)