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440. 世界人口と農業・食料システムの動向

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440. 世界人口と農業・食料システムの動向

国際開発問題と気候変動対策を検討する上で、将来の人口水準がとりうるパターンを理解することは極めて重要です。不確実性の高まる世界経済ですが、人口動態は比較的予測しやすいものとされています。このPick Upでも、断トツにアクセスの高い過去記事は世界人口に関するトピックです。 

 

国連による世界人口推計は2017年、そして2019年に更新されました。2019年の報告では、世界人口が2030年に85億人、2050年には97億人、2100年には109億人(中央値)に達すると予測しています。ただし研究者グループの中には、国連の推計は出生率を高く見積もりすぎているとし、世界人口は2064年に97億人でピークに達し、2100年に87.9億人に減少すると予測もあり 研究者の間でも出生率の下落する速度等への見解には相違があるそうです。 コロナ禍に伴うロックダウンや経済危機は、世界の出生率予測にさらなる不確実性をもたらすかもしれません。2021年に予定されていた国連世界人口予測の公表は2022年に延期されるそうです。

 

様々な世界の事象を統計ダッシュボードによって可視化を試みるオンラインサイトのOur World in DataとVisual Capitalistは、現在79.1億人の世界人口が2022年中には80億人に達する可能性が高いとし、世界人口動態の趨勢に関する特集記事を組んでいます。紀元前3000年前は、人口の集中は、中央アメリカ、地中海、肥沃な三日月地帯、インド・中国・日本の一部に限られており、農業発祥地と一致していました。現在の人口分布は、文明の発展に伴い人類が自由と機会を求めて拡散していった結果でもあります。人類が10億人に達するまでに1803年かかりましたが、20億人に達するのに要したのは124年(1928年)、そして30億人は33年(1960年)、40億人は15年(1975年)、50億人は12年(1987年)…と、人口の増え方は指数関数的でした。その背景には農業革命がありました。 20世紀後半から既に世界平均で人口増加率は下落傾向にあります。しかし、途上国を中心に人口は増え続け、21世紀中に、人口は80億人から少なくとも17-20億人増え、97-100億人には達すると予測されています。もし現状の食料消費パターンを前提とするならば、気候変動の影響を加味したうえで、人口増に合わせて食料増産の必要があります。


現在の食料消費パターンをみると、世界平均では人類に十分なカロリーを提供していますが、生産された食料の三分の一がロス・廃棄される一方、世界人口の十分の一が飢え、三人に一人が微量栄養素に欠く不健康な食事を摂取しているという問題を抱えています。こうした今日の食料システムは、地球の限界(Planetary Boundaries)に達してしまっています。 


気候変動を緩和し、生物多様性の保全を重視すれば、増える世界人口に合わせて農地拡大を続ける余地は残されていません。同時に、既に酷使されている土地・土壌・水の資源は持続性の限界に近付きつつあるともされています。今年9月に開催された国連食料システムサミットでは、こうした将来を見据え、地球の限界内でフードセキュリティと気候変動対策・生物多様性保護を実現するには、動物性食品の過剰な消費から植物性食品中心の食生活への移行に加え、森林破壊を伴う耕地拡大にかわり既存の土地での収量を向上させ、温室効果ガス排出を削減しカーボン固定吸収するイノベーションの必要性が議論されたのでした。 

 

人口動態や気候変動・環境問題の動向を踏まえ、世界のフードセキュリティについて展望することは、人類と地球の持続性を議論するうえでも欠かせません。ぜひ、12月17日にオンライン開催される国際農研-CCFS研究会をご視聴ください。

 

気候変動とコロナ禍の食料需給への影響–不確実性下のフードセキュリティ–

主催:国際農林水産業研究センター、CCFS研究会

開催日:2021年12月17日(金) 11:30~16:15 (11:00開場)

場所:オンライン(Zoom)

プログラム:https://www.jircas.go.jp/ja/workshop/2021/e20211217

受付期間:2021年11月30日(火) 09:00 - 2021年12月16日(木) 17:00

申込受付:国際農研-CCFS研究会ワークショップ事務局

URL:https://www.jircas.go.jp/ja/workshop/2021/e20211217/entry

申込締切: 2021年12月16日(木) 17:00

Email: jircas-ccfs@ml.affrc.go.jp

備考:先着500名で締め切ります

 

(参考文献)

David Adam.How far will global population rise? Researchers can’t agree.  NEWS FEATURE 21 September 2021. Nature 597, 462-465 (2021) doi: https://doi.org/10.1038/d41586-021-02522-6

Visual Capitalist. Population Boom: Charting How We Got to Nearly 8 Billion People November 29, 2021, By Our World in Data green checkmark iconFeatured Creator, Article/Editing: Jeff Desjardins. https://www.visualcapitalist.com/cp/population-boom-charting-nearly-8-b…

 

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

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