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817. 2023年・世界人口デー

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817. 2023年・世界人口デー

7月11日は世界人口デーです。食料栄養安全保障を維持しつつ、国際開発問題と気候変動対策を検討する上で、将来の人口水準がとりうるパターンや各国各地域の人口動態を理解することは極めて重要です。国連の推計によると、世界人口は2022年に80億人に到達する一方、2023年初めには長らく中国が有していた国別の人口世界一の座が、インドに移ったことも伝えられました。国際農研のPick Up記事でも、世界人口にまつわる記事は高いアクセスを誇り、人々の関心が高いことがうかがえます。

 

世界人口のトレンドについて、国連の特設ページがまとめています。

人類の誕生から19世紀の半ばに世界人口が10億人に達するまで、長い時間を要しましたが、それからわずか200年足らずの2011年に7倍となって70億人をマークしました。2021年に79億人、2022年に80億人となり、推計では2030年には85億人、2050年に97億人、2100年には109億人に達すると予測されています。

この劇的な人口増加は、子供を産む年齢まで生存できる確率が高まったことに加え、出生率・都市化・人口移動などの大きな変化を起因とし、こうしたトレンドは将来世代にとっても大きな影響を及ぼします。

とくに近年、出生率と寿命に大きな変化が見られます。1970年代、女性は平均4.5人の子供を産んでいましたが、2015年までに女性一人当たりの子供は2.5人に減少しています。一方、世界的に寿命は延び、1990年代初頭には64.6年であったのが2019年には72.6年になっています。

加えて、都市化や人口移動・移民も加速しています。2007年、はじめて世界で都市に住む人々の数が農村に住む人々の数を上回りましたが、2050年までに世界人口の66%が都市に住むようになると予測されています。

これらの大きな世界の動向は、経済開発、雇用、所得分配、貧困、そして社会保障の在り方に大きな影響を及ぼします。普遍的な保健システム・教育・住居・衛生・水・食料・エネルギーへのアクセスを確保する上で、大きな努力を要することになります。個人のニーズを持続的に満たしていくために、政策に携わる関係者は、地球上の様々な地域に暮らす人々の生活だけでなく、将来世代の暮らしにも思いをはせて、持続的可能な開発に向けて準備をしていく必要があります。

 

世界人口動態の背景には、食・食料システムの変化もあります。1970年代から2020年代までの50年間をとると、世界人口は40億人から80億人に倍増しました。この間、近代農業技術の適用により、穀物生産は人口増を上回る生産増を実現し、飢饉の撲滅を達成します。同時に、動物性食品や加工食品産業の展開は肥満・過体重という新たな課題をもたらすようになりました。一方、熱帯地域では近代的な農業技術が適用できずに主食作物の生産が停滞し食料栄養安全保障を維持できない地域も存在し、熱帯林の一部は換金作物のプランテーションへと転換され、森林破壊や生物多様性喪失の原因となっています。このように、今日の食料システムは、肥満・低栄養問題という極端な栄養上の問題を抱えており、同時に、窒素・リン循環、生物多様性喪失、土地利用変化、気候変動の分野で、プラネタリー・バウンダリーを超える主要因にもなっています。これから2050年代までの30年間に、世界人口はさらに20億人増えることが予測されていますが、現状維持では100億人の人口と地球の健康は保証できません。環境負荷が低く、栄養に富む食を中心とした生産・消費体系へのパラダイムシフトが必要となり、そのためのイノベーションおよび行動変容が求められるのです。

 

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(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 


 

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