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220. 生物多様性のためのワンプラネット・サミット (One Planet Summit for Biodiversity)

 

2021年1月11日に第4回ワンプラネット・サミット*が開催され、生物多様性の保護のための国際的な行動を加速させるために、4つのテーマに焦点を当てた議論が行われ、9つのイニシアチブについて報告されました。

1. 自然および海洋生態系の保護

  • フランスとコスタリカは、生物多様性条約締約国会議で野心的な自然保護目標を採択するため、自然と人々のための連合(High Ambition Coalition for Nature and People)を立ち上げました。52カ国が賛同し、2030年までに陸域および海洋空間の30%の保護に取り組むことを約束しています。
  • 2030年の模範的な地中海のための新しい連合(Coalition for an Exemplary Mediterranean)がフランス、スペイン、モナコ公国によって発足し、(1)保護地域ネットワークの構築、(2)乱獲の撲滅、(3)海洋汚染の撲滅と使い捨てプラスチックの廃止、(4)海上輸送のグリーン化を約束しています。
  • ドイツは、開発途上国および新興国の保護地域に持続可能な官民資金を提供することを目的としたレガシー・ランドスケープ基金(Legacy Landscape Fund)の立ち上げを決意しました。


2. アグロエコロジーの推進

  • 1980年代に開始されたグレート・グリーン・ウォール(緑の長城)計画を促進するためのプログラム(Great Green Wall Accelerator)が設立されました。このイニシアチブは、すべてのドナーによる財政的努力を促進することを目的としており、サヘルの緑化への新たな弾みを目指しています。

3. 生物多様性のための資金

  • ウェールズ皇太子の発案で自然資本投資同盟(the Natural Capital Investment Alliance)が発表されました。生物多様性の回復への投資を増やすことを望む金融関係者を集めて、2022年までに100億ドルを調達することを目標としています。
  • サミットにおいて、カナダ、フランス、ノルウェー、英国は、「ワンプラネット・サミットのメンバーは生物多様性にも利益をもたらす気候資金の割合を増やすよう努力する」という原則を支持することを表明しました。
  • カナダ、フランス、英国は、自然関連の財務情報開示に関するタスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosure)を後押ししました。このイニシアチブは、50以上の大手金融機関を含む官民の利害関係者によって推進され、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)のように、生物多様性に関する経済活動のリスク、影響、便益を測定するための枠組みを開発することになります。
  • カナダは、特にアフリカにおける土地の持続可能な管理と回復を支援するため、土地劣化の中立性に関する基金(Land Degradation Neutrality Fund)に最高5,500万カナダドル(3,530万ユーロ)を拠出することを発表した。さらに、フランスもこのイニシアチブに参加することを発表しました。


4. 森林、生物、人間の健康の保護

  • フランスはPREZODE(PREventing ZOonotic Diseases Emergence)イニシアチブを開始しました。人獣共通感染症に由来する新たなパンデミックの予防のために、研究関係者と警戒ネットワークの間で国際協力を確立するもので、現在、世界中で400人以上の研究者が参加しています。


日本政府も、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロとするカーボンニュートラルを目指し、地域の自然資源を重視した活力ある地域社会の構築を進めるとの声明を発表しました。

国際農研は、日本・国際社会が取り組むべき地球規模課題の最新情報、とりわけ農林水産業分野における科学技術の戦略的動向を紹介しています。人獣共通感染症の発現は、人為的経済活動に伴う環境破壊・生物多様性の喪失が原因とされ、現状が続けば新たな感染症のより頻繁な発現が予測されています。ワンプラネットという言葉は、国際社会が一致してパリ協定を始めとする温室効果ガス排出の削減・環境保護行動に取り組む必要性が反映されているとも言えます。生物多様性に関する情報については、以下の国際農研Pick Up記事もご覧ください。

132. 生きている地球レポート2020:生物多様性の減少から回復へ https://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20200916
140. 地球規模生物多様性概況 第5版 https://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20200928
169. 生物多様性とパンデミック  https://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20201106
196. 多様性の喪失とCOVID-19  https://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20201216

*ワンプラネット・サミットとは: 2017年12月、気候変動に関する官民の行動を加速するため、フランス大統領府、国連、世界銀行により立ち上げた。

参考:
ワンプラネット・サミットホームページ(英・仏):https://www.oneplanetsummit.fr/en
環境省 小泉環境大臣会見:https://www.youtube.com/watch?v=Wh_DqiY_-Gw

(研究戦略室 金森紀仁)