国際機関動向
国連気候変動サミット科学諮問グループ(The Science Advisory Group of the UN Climate Action Summit 2019)「科学を通じた団結 - 最新気候変動科学に関するハイレベル報告書 [United In Science - High-level synthesis report of latest climate science information]」概要
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情報収集分析
2019年9月にニューヨークで開催された国連気候変動サミットに合わせ、世界気象機関(WMO)や国連環境計画(UNEP)、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)など、気候変動研究に関わる世界トップの機関が、温暖化対策への合意と益々乖離しつつある現状に警鐘を鳴らす報告書を共同で公表した。本報告書「科学を通じた団結(United in Science)」は、気候変動の現状と温室効果ガスの排出や大気濃度についてのトレンドを示し、将来取り返しのつかない気温上昇リスクを回避するため、土地利用やエネルギー部門において抜本的な社会経済構造の転換の必要性を訴えている。また、気候変動緩和・適応双方に貢献しうるツールについても検討している。
WMOがコーディネートを務めた本報告書は、権威ありかつ実現可能な最先端科学をわかりやすくパッケージ化して伝えることを目指している。以下、幾つか要点を抜粋する。
- 2015-2019年の世界の平均気温は史上最も暑かった。現在の気温は、産業化以前(1850-1900)に比べ1.1℃高く、その前の5年間期間の2011-2015年より0.2℃高いと推計される。
- 世界の平均海水面上昇は加速しており、産業界時代以来、海洋の酸性度は全体で26%上昇した。
- 化石燃料使用によるCO2(二酸化炭素)排出は毎年1%以上の速度で上昇し続け、2018年には2%上昇の記録を更新した。
- 現在のCO2(二酸化炭素)、CH4(メタン)、N2O(亜酸化窒素)排出レベルは、1750年以前に比べ、146%、257%、122%、と推計される。
- 世界的な温室効果ガス排出は、2020年どころか2030年までもピークに達せず、増加し続けると予想されている。
- 2℃ゴールを達成するには、温室効果ガスの排出削減等の現在の国別目標(Nationally Determined Contributions-NDC)を3倍に、1.5℃ゴールを達成するには5倍に引き上げる必要がある。技術的に、まだ現状と理想の乖離を埋めることは可能である。
- 産業化以前の水準より気温上昇を1.5℃以内に抑制する努力は、持続可能な開発や貧困撲滅等のゴールと並行して行う必要がある。
より詳しい内容に関しては、以下のリンク等から報告書原文を参照のこと
https://public.wmo.int/en/resources/united_in_science
なお、概要に関する本翻訳は、国連から公式に承認を受けたものではなく、翻訳上の誤りなどの責任は文責にある。
(文責:研究戦略室 飯山みゆき)