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620. 科学の下で団結せよ ― United in Science 2022

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620. 科学の下で団結せよ ― United in Science 2022

9月の国連総会の開催に合わせ、世界気象機関(WMO)を中心とした国連機関は、最新の気候科学関連情報に関する報告書(United in Science)を公表しています。

2022年の報告書(United in Science: We are heading in the wrong direction)公表にあたり、グテレス国連事務総長は、気候変動への野心的なゴールと現状の大きな乖離に言及し、世界が破滅的な方向に進んでいることに警鐘をならしました。 

報告書によると、COVID-19によるロックダウンで化石燃料による温室効果ガス排出が2020年に一時的に落ち込んだものの、2020年にはパンデミックレベル水準に戻り、大気中の二酸化炭素濃度は2021・2022年と増加傾向を示しています。

2018-2022年は史上最も気温の高い5年間であり、1850-1990年の平均気温に比べて1.17 ± 0.13 °C 高くなっています。ラニーニャ現象は2021・22年の気温を若干冷却する効果がありましたが一時的なものにとどまっています。 地球システムに蓄積された熱の90%近くが海洋に貯留されますが、この5年間に過去最高水準の海洋貯熱量が観察されており、海洋の温暖化は過去20年間で極めて顕著になっています。

今後、次の5年間に一度でも年間平均気温が産業化以前に比べ気温上昇が1.5℃を超える確率は48%とされます。5年間の平均値が1.5℃を超える確率はまだ小さい(10%)と見なされていますが、長期的に温暖化を1.5℃に抑えようとするパリ協定の限界を超える年が年々増えることも予測されています。

気候システムが転換点に達しかねない可能性についても研究が進んでおり、グリーンランドや南極の氷床の融解はさらに海面上昇を悪化させかねないことが懸念されています。地域レベルの転換点も極めて深刻な地域レベルと世界レベルの波及効果をもたらしかねません。例えば地域レベルでの過度の干ばつは世界のカーボンサイクルに影響を及ぼし、モンスーンなどの気象システムを攪乱しかねません。

2030年までに、2℃内に温暖化を抑制するためには現行の4倍の気候変動緩和対策が必要であり、1.5℃内に収めるには7倍の対策が必要になるとされています。

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)

 

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