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132.生きている地球レポート2020:生物多様性の減少から回復へ

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WWF(世界自然保護基金)は、『生きている地球レポート2020:生物多様性の減少から回復へ』を発表しました。

本レポートでは、世界の生物多様性の豊かさを測る指標(LPI: Living Planet Index*)を用いて、1970年から2016年の間に脊椎動物の個体群が68%も減少したことを示しました。地域別に見ると、ラテンアメリカ及びカリブ海地域の94%減少が観測地域で最悪な結果を示し、その他の地域においてもアフリカ65%、アジア太平洋45%、北アメリカ33%、ヨーロッパ・中央アジア24%の減少でした。

これまでのピックアップ記事でも生物多様性の損失について取り上げましたが、生物多様性の損失は、無秩序な鉱山・インフラ開発や非持続的な農業と森林破壊といった人間活動が主要な原因です(Pick Up 646)。この傾向が続く限り、食料・保健システム崩壊をはじめとした人間社会の破綻をもたらしかねません。本レポートでも述べられていますが、現時点で既に地球が供給できる能力を60%もオーバーしています。つまり、人間が現在の生活を維持するためには、地球1. 6個分の自然資源が必要なのです(Pick Up 61)。

2020年は生物多様性戦略10年計画および国連生物多様性10年の最終年です。また、持続可能な開発目標(SDGs)の達成まで残り10年という重要な年でもあります。生物多様性の損失に対処するためには緊急の行動を必要とし、本レポートでは、生物多様性の減少から回復させるために、環境保全強化、持続可能な生産および消費対策を組み合わせた統合的に取り組む必要性を訴えています。言い換えると、自然を持続的に管理・保全する方法や、食料を生産・消費する方法に真の変革が求められています。

こちらの記事も是非ご覧ください。

Pick Up 6. 気候変動と世界食料生産危機-持続的資源・環境管理技術への期待 https://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20200325

Pick Up 46. 国際生物多様性の日 https://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20200522

Pick Up 61. 2020年 世界環境デー 生物多様性 https://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20200610

*LPI: Living Planet Index:陸上、淡水、海洋の脊椎動物(哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、魚類)の4,733種、27123個体群を対象に、個体群のサイズの推移をもとに計算した世界の生物多様性の状況を示す指標。

 

参考:

生きている地球レポート2020 (Living Planet Report 2020)

Full report (英語):https://f.hubspotusercontent20.net/hubfs/4783129/LPR/PDFs/ENGLISH-FULL.pdf

Summary (英語):https://f.hubspotusercontent20.net/hubfs/4783129/LPR/PDFs/ENGLISH-SUMMARY.pdf

「生きている地球2020」ファクトシート (日本語):https://www.wwf.or.jp/activities/data/lpr20_01.pdf

WWF(World Wide Fund for Nature: 世界自然保護基金)ウェブサイト(日本語):https://www.wwf.or.jp/

 

(研究戦略室:金森 紀仁)

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