Pick Up

137. ビル&メリンダ・ゲイツ財団 「ゴールキーパーズ・レポート」

関連プログラム
情報収集分析

 

2020年9月、ビル&メリンダ・ゲイツ財団より、年次報告書『ゴールキーパーズ・レポート』公表にあたり、報告書概要の紹介文を寄稿いただきました。

------------------------------------------------------------------------------------

 

このたび、当財団の年次報告書『ゴールキーパーズ・レポート』を公表しましたのでお届けします。

これまでに発行されたレポートでは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に含まれる169の指標の内、特に貧困や感染症に関わる18指標を追跡しながら、これらの世界的課題との戦いにおける数十年にわたる歴史的な前進を祝ってきました。しかし、今年は残念ながら大多数の指標において後退しています。したがって今回のレポートでは、パンデミックが健康、経済、その他あらゆるものに与えているダメージを分析しながら、世界が協調した対応の重要性について触れています。お時間がある際、ぜひご覧いただけますと幸いです。

URL:

[英語版 年次報告書『ゴールキーパーズ・レポート』]

https://www.gatesfoundation.org/goalkeepers/report/2020-report/?utm_sou…

関連記事:

*        時事通信社「コロナ禍でSDGs後退 国際社会に対応求める」https://www.jiji.com/jc/article?k=2020091500824&g=int

*        読売新聞「ゲイツ氏 ワクチン開発 連携促す」https://www.yomiuri.co.jp/world/20200916-OYT1T50012/(会員限定)

今年のハイライト:

*        ワクチン接種率:私たちがデータ・分析のプロジェクトで提携しているInstitute for Health Metrics and Evaluation(IHME)によると、今年のワクチン接種率は、1990年代に見られたレベルまで低下していることがわかりました。言い換えれば、たった25週間で約25年分も後退しているということになります。

*        国際通貨基金(IMF)によると、今回のパンデミックで世界経済は来年末までに12兆ドル以上の損失を被ると予測しています(世界中が各国の経済を刺激するためすでに18兆ドルを費やしたとしてもです)。新型コロナウイルス感染症による財政的損失は2008年の「大不況」の2倍であり、これほど多くの国が一度に不況に陥ったのは1870年以来のことです。

*        このような状況下、多くの低中所得国が直面する課題に対応するためにイノベーションを起こしています。また、ワクチンをはじめとする感染症対策ツールの開発が劇的に促進され、これらを公平に提供する仕組みも出来上がりました。長年インフルエンザの感染モデリングを行ってきたノースイースタン大学生物・社会技術システムモデリング研究室 (MOBS LAB) のシミュレーションによると、約50カ国の高所得国が有効なワクチンを接種する場合と、すべての国が人口に比例して30億回分のワクチンを接種する場合では、後者の方が回避される死亡者数の割合が約2倍となりました。

マーク・スズマンCEOの挨拶:

「ビル&メリンダ・ゲイツ財団では、『Progress is Possible but Not Inevitable (進歩は可能だが、必然ではない)』という考えがあります。今回のパンデミックほど、そのことを証明するものはありません。私たちは、毎年命を落とす子どもの数が減り、食卓を支えるのに苦労している家族が減り、より多くの女の子が学校に行けるようになり、また、より多くの女性が出産を乗り切ることに慣れてきました。しかしCOVID-19はその進歩を止めてしまいました。そして、その波及効果は壊滅的なものとなっています。これは世界共通の危機であり、世界共通の対応が求められています。COVID-19を歴史に刻み、SDGsに向けた進展を再燃させるために、世界はかつてないほどに団結しなければなりません。」

最後に:

世界がどのように協調的な対応を組織するかは、まだ正確には明らかになっていません。しかし、パンデミックを終わらせるための国際協働メカニズム「Access to COVID-19 Tools Accelerator」(ACT-A)が4月に立ち上げられ、以来、多くの国が賛同・参加を表明しています。ACT-Aのワクチン戦略における主要なパートナーであるCoalition for Epidemic Preparedness Innovations (CEPI)は、9つのCOVID-19ワクチン候補を保有しています。またGaviワクチンアライアンス(旧・ワクチンと予防接種のための世界連盟)は2000年の設立以来、低所得国や中所得国へ7億5,000万本のワクチン供給を支援してきました。Gaviは加えて、CEPIとWHOと共に、資金の不足している途上国(低所得国・下位中所得国、一部の島しょ国など92か国)にワクチンを供給する「COVAX-AMC」(COVAX事前購入誓約)と、ワクチンを自費で購入する先進国や一定の資金力のある国(高所得国・上位中所得国)が活用できる「COVAX Facility」(COVAXファシリティ)の両輪でワクチン提供を行うことに取り組んでいます。今月の頭、日本政府は正式に参加表明する方針を固めました。

私たちは今後も、日本政府、民間企業、アカデミア、市民社会の皆様と連携しながら、引き続き一人でも多くの命を守っていく所存です。

(寄稿:ビル&メリンダ・ゲイツ財団 日本常駐代表 柏倉美保子様)

関連するページ