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218. 科学者による気候変動適応策強化の呼びかけ

 

世界は気候変動の緊急危機に直面しています。温室効果ガス排出の加速化の中で、強烈な干ばつ、山火事、熱波、洪水、破壊的なサイクローン、台風などの極端気象の頻度が増加している現象について、科学者らは人為的な経済活動に起因すると指摘しています。

2021年1月25-26日、オランダ政府の主催により、気候変動適応サミット (Climate Adaptation Summit 2021)がオンラインで開かれます。 これを機に、1月22日、世界の指導者達に向けて、世界中の研究者達が気候変動適応のための経済刺激策の強化を訴えました。

声明の一部を紹介します。 世界はコロナ禍と気候変動の二つの危機に直面していますが、環境破壊を食い止めなければ新たなパンデミックが起こりかねません。科学軽視の風潮がコロナ・パンデミックをもたらしたのであり、気候変動とコロナの同時危機への対応には、科学コミュニティの提言に耳を傾ける必要があります。気候変動適応策がとられなければ、世界食料生産の増加率は2050年までに30%減少し、5億世帯の小規模農家が最大の被害を被り、年に1月以上の水不足に陥る人々の数が今日の36憶人から2050年までに50億人に達し、海面上昇と嵐の頻度の増加より沿岸部では数億人が避難を迫られるとも予測されています。我々は自然システムの保護を強化し、森林破壊・劣化を回避し、海水・淡水湿地帯・マングローブ・草地・珊瑚礁の保全と回復に努めなければなりません。農業における持続的な適応的土地管理は、我々のフードシステムが自然システムと共存しつつ、より強靭で高い生産性を維持することを可能にします。適切な計画と投資のためには、自然システムがもたらす便益を十分理解することから始めなければなりません。

気候変動適応策への機運を高めるためには、気候変動による長期的な費用と気候変動対策投資に対する見通しが、政策策定の上で重要な役割を果たします。農研機構を中心とし国際農研も参加する研究グループは、気候変動により気温上昇が進むと、適応に要する費用と、対処しきれずに生じる生産被害が増大することを試算し、温室効果ガスの排出削減等により気候変動の進行を抑えることと、栽培作物の変更や灌漑設備の整備等のより大きな変化を伴う対策の検討の必要性を訴えました。国際農研はまた、国内研究機関・開発途上国のパートナーとともに、不良環境に強いスーパー作物の開発に繋がる基礎的研究や、貧栄養土壌や生育期間中の不安定な生産環境(水不足、低温・高温ストレス)を克服しうる栽培技術の開発など、技術開発を通じて気候変動適応への貢献を行っています。

参考文献

Global Center on Adaptation. Nobel Laureates, Global Scientists call on World Leaders to Accelerate Climate Adaptation. 22 January 2021 https://gca.org/news/nobel-laureates-global-scientists-call-on-world-le…

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)