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23. 新型コロナウイルス・パンデミック ― 世界気象機関 (WMO)報告:地球温暖化の経済インパクト

2020-04-26

世界気象機関(World Meteorological Organization)は、2020年4月22日、「2015-2019年グローバル気候報告書(The Global Climate in 2015–2019)」を公表しました。「2015-2019年グローバル気候報告書」の一部は2019年9月国連気候アクション・サミットでも発表されました(参考資料)。今回、WMOは、過去5年間に気候変動の兆候と地球へのインパクトは次第に勢いを増し、今後もこの傾向が続くと予想される中、さらに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が気候変動の社会経済的影響を悪化させていると警鐘を鳴らしました。以下、今回の報告書とブログ(WMO April 22, 2020)の概要を紹介します。

2015-2019年の気温は2011-2015年に比べて0.2℃高く、1970年に比べ世界平均気温は0.86℃上昇し、産業革命以前に比べると既に地球は1. 1℃熱くなっています。大気中の温室効果ガスも最高値を記録し、とくに二酸化炭素は、2015-2019年の間、それ以前の5年間に比べて18%上昇しました。温室効果ガス排出の上昇は、海水面の上昇、北極海氷・南極海氷・氷河・南極やグリーンランド氷床の消滅、北半球における春の積雪の減少、熱波や山火事の頻発、といった現象にも表れています。洪水は伝染病の集団発生をもたらす環境を生み出し、13億近くの人々がコレラ感染のリスクにさらされ、アフリカだけでも4000万人が取り分けリスクの高い「ホットスポット」に置かれていると推定されています。

気候変動は甚大的な社会経済被害をもたらします。気象災害の中でも最大の影響をもたらすのが洪水・地すべりを伴うサイクローンですが、とくに2018年のハリケーンHarveyは1250憶ドル相当の損失をもたらしました。気候変動に伴うリスクは、また、干ばつや洪水等を通じ、多くの国々、とりわけアフリカ諸国の食料安全保障を脅かしました。気温上昇は、途上国GDPへの負の影響を通じ、経済開発の努力をとん挫させかねません。WMOは、ブログにおいて 国際通貨基金(IMF)の分析を引用し、平均年間気温25℃の中~低所得途上国においては、1℃の気温上昇は1.2%のマイナス経済成長をもたらしかねないとしました。気温上昇によって最も深刻な影響を受ける国々のGDPは、2016年世界GDPの20%相当にすぎませんが、これらの国々は既に世界人口の60%を抱え、今世紀末にはその割合が75%に上昇することが予測されることを考えれば、世界経済にも大きな影響をもたらすことがわかります。

複数のモデルを使った気候予測によると、次の5年間 (2020-2024)に、世界は新たな平均最高気温を更新するだろうと見られています。COVID-19は温室効果ガスの削減を一瞬もたらすかもしれませんが、継続的な気候変動対応に代わるものではありません。それどころか、パンデミックは、気候変動により苛烈さを増している気象・気候・水関係の災害への救急・医療対応をより困難にするでしょう。COVID-19は国際的な保健・経済危機ですが、気候変動にも同様に世界が団結して取り組まなければ、今後数世紀にわたって人間社会・エコシステム・経済は危機に直面しかねません。従来、経済危機後の回復は温室効果ガスの上昇を伴ってきましたが、ポストCOVID-19の景気浮揚対策は、より持続的(greener)な経済の構築に向けられるべきです。

 

参考文献

​WMO. Earth Day highlights Climate Action. April 22, 2020. https://public.wmo.int/en/media/press-release/earth-day-highlights-climate-action

WMO (2020) The Global Climate in 2015–2019 https://library.wmo.int/doc_num.php?explnum_id=9936

(参考資料)

国連気候変動サミット科学諮問グループ(The Science Advisory Group of the UN Climate Action Summit 2019)「科学を通じた団結 - 最新気候変動科学に関するハイレベル報告書 [United In Science - High-level synthesis report of latest climate science information]」概要https://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20191003 

世界気象機関(WMO)「WMO温室効果ガス年報  WMO GREENHOUSE GAS BULLETIN」概要 https://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20191128 

(文責:研究戦略室 飯山みゆき)